短編
□僕だって恋くらいする
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「今日から女中として来ました、天草ヒツメです。よろしくお願いします。」
沖田は寝ぼけ眼を擦りながら朝礼を聞いていた。女中など、新撰組には何人か居るし、元々あまり女に興味はない。
「髪色が同じなんで兄妹みたいですね。」
山崎が小声で話しかけてきて、沖田は欠伸をしながら、なんとなく近藤さんの横に立つ女に視線を向けた。
自分より少し背の低い、綺麗な顔立ちの女。髪色は確かに同じだが、女の方が当然長い。
少し恥ずかしそうに伏せられていた青い瞳が、沖田と交わった。
沖田の心臓が一瞬大きく跳ねた。
何故か堪らなくなって視線を外す。遠くで近藤さんと女が話す声が聞こえた。
自分の心臓に手を当ててみる。まだドキドキしていて、顔も熱い気がする。
「どうしたんですか、沖田隊長。」
「…なんでもねェ。」
沖田は不思議そうに見つめてくる山崎を置いて自室へと戻る。
彼女の青い瞳が脳裏に焼きついて離れない。くそ、と溜息をついたその瞳は笑っていた。