短編
□その言葉を待ってた
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「次の任務で死んじゃう!だから俺と結婚してよぉ!!」
いつものように通りすがりの若い女に泣き喚く善逸を、炭治郎が引き摺るように連れて歩く。善逸は、本気で涙を流しながらしゃくりをあげている。
「どうして善逸はいつも恥を晒すんだ。」
「言い方酷すぎじゃない?!死ぬかもしれないんだから結婚しときたいじゃん!!」
「じゃあ、ヒツメに早く言えばいいだろう。」
「っ、え、なんで…?!」
急にしどろもどろになり、赤面する善逸。善逸はヒツメに対しては結婚して欲しいなどとは一切言わない。というより、恥ずかしくて冗談でも言えない、というのが正しい。
「ヒツメちゃんは特別なの!俺なんかと結婚なんて絶対無理!!」
大きな叫び声を上げながら道端で転げ回る善逸。人通りが少ないとは言え、町の中なので相当目立っている。
「やめろ善逸!分かったから立ってくれ!」
「俺だってヒツメちゃんが結婚してくれるんだったら、こんなに喚いてない!」
鼻水を垂らしながら炭治郎に縋り付く善逸。炭治郎は引き摺るようにして歩こうとして、ぴたりと止まる。
「結婚してほしいなら、そう言ってくれればいいのに。」
善逸は炭治郎の羽織に鼻水を付けたまま、静止している。二人の視線の先にはヒツメが呆れた顔で立っていた。
「え、え?!本当?!本当に結婚してくれるの?!」
「あ!こら!善逸、鼻水を拭け!」
鼻水をそのままにヒツメを追いかけるように走る善逸。
「誰も結婚するなんて言ってないけどさぁ。」
「えぇー!!酷すぎじゃない?!さっき結婚してくれるって言ったよ!俺泣くよぉ!!」
「言ってない!もう既に泣いてるじゃん!!」
善逸に背を向けたヒツメは笑っていた。