長編【下弦は宵闇に嗤う】

□15.刀鍛冶の里へ
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「それで、いつ帰る予定なの?」

「クイナ、あんまり大きい声で言わないでってば。善逸に聞こえる。」

しー、と唇に指をあてて視線を巡らせる。とはいえ、クイナが私の肩に乗って白い羽を広げるものだから全く見えなかったけれど。蝶屋敷の縁側に置かれている大きめの岩。全集中の呼吸 常中を会得する際にお世話になった岩だ。私は縁側に居るよりもこっちに座る方が安心するのだ。

「腕はまだ本調子じゃないけど、脚は殆ど治ってるからね…明日の夜かな。」

「そう、じゃあ明日の夜にまた来るから。」

クイナはそう言うと飛び去っていった。いつもならこの後は話し相手になってくれるんだけど。今日は何か用事でもあったのかもしれない。
私はさして気にも留めず、クイナが飛び去った方の空を見つめていた。


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