短編

□何回だって言いますよ
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「俺、ヒツメさんのこと好きなんです。」

しのぶに調合してもらった薬を受け取って部屋を出ると、炭治郎が廊下に立っていた。ヒツメを見るなり、突然告白してきたのだ。

「え、あの…」

「ヒツメさんと一生を添い遂げたいんです!」

何を言い出すかと思えば。ヒツメは嬉しいやら、場所が場所だけに恥ずかしいやらで混乱してしまう。とりあえず庭先に出よう、ここでは人の目につくし、聞かれてしまう。

「炭治郎、外行こう。」

「ヒツメさんも俺と同じ気持ちですよね。」

ぶわ、とヒツメの顔が赤くなる。炭治郎は鼻がきくから、同じ気持ちだなんてすぐにバレてしまう。分かってはいたことだけれど、こんなところで言われてしまうなんて。

「ヒツメさんが、お付き合いしてくれるまで、俺は何回でも言いますよ。」

恐る恐る赤い顔のまま、振り返ると清々しいくらいの笑顔でヒツメを見る炭治郎が居た。



「俺、ヒツメさんのこと好きなんです。」

また言いに来たの、とヒツメは返す。ここ数日間で、このやり取りを5回は繰り返している。竈門炭治郎というこの男は、会うたびに一言目にこの言葉を発するようになり、回数を重ねる毎に楽しそうな表現を浮かべているのだから、たちが悪い。もちろん、本人は気付いていない。
ヒツメが折れるまで、そう遠い時間もかからないだろう。


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