短編
□君の為なら俺は
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「ヒツメちゃんが普段よく居るところを教えてくれないか。」
炭治郎の真剣な瞳が俺をじっと見つめている。いくら男でもこんな整った顔に見つめられたら間違って惚れてしまいそうだ。いや、俺にはそんな趣味はない!
「なんだよ、この前甘いものが好きって教えたばっかじゃん。」
意地悪くそう言ってやる。だって炭治郎ばっかりずるいだろ?俺だってモテたいのにさ。炭治郎は分かりやすく項垂れた。
「駄目なんだ、ヒツメちゃんのことが頭から離れない。」
「炭治郎、本気なの?」
本気で好きかどうなんて俺には分かるし、炭治郎もそれを分かってる。項垂れているのも、俺が炭治郎の求めてる答えを本当は渋ってなんかいないこともお互い、理解してる。
「本気だ。なんとかして話せるようになりたいんだ。」
もう一回くらい、何か言ってやろうと思ったけど炭治郎の目が怖いからやめておこう。
「駅前のカフェでよく課題してるよ。」
「そうか、ありがとう。じゃあまた明日。」
さっきまで項垂れてたくせに!清々しい程の笑顔で走り去っていった。なんだよ、用が済んだらすぐ行っちゃうなんて失礼な奴だな!
「どこ行くんだよ、次の講義一緒だろ!」
「用事ができたから上手いこと言っておいてくれ!」
真面目の権化みたいな炭治郎からそんな言葉が飛び出すなんて。よっぽど大切な用事なんだなぁ。
俺は炭治郎が走っていった方向を見つめていた。