長編【蛍石は鈍く耀う】

□(3)永遠の絆
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俺はヒツメに告白した日から、あれこれ考えるのをやめた。俺がどうにか出来る問題じゃない、と今更気づいてしまったから。俺が、炭治郎とヒツメの関係をただの幼なじみに戻そうとしたり、逆に引き離そうとしたりしてもそれを決めるのは俺じゃない。結局俺はヒツメが好きだから、頼れる友人でありたかっただけだ。自分のエゴでしかない。

ヒツメが熱を出した翌週、俺は朝からヒツメの家へ向かう。昨日連絡したときは、学校へ行けそうだと言っていたけど心配だ。玄関から出てくるヒツメは、とても元気そうで安心する。金曜日は気疲れも相まって熱が出たのかもしれない。

炭治郎は学校へ来ていたけど、一言も話さなかった。俺が強く言ったせいもあるのかもしれないけど、炭治郎は落ち着いていた。

子どものように、なりふり構わず欲しいものを手に入れるような行動をしていた炭治郎を俺は否定した。炭治郎は、ヒツメの為に俺は忠告したのに聞かなかったから襲った、なんて言いやがった。あまりにも身勝手な行動をヒツメの為に、なんて免罪符をつけて。

『違う、自分の為だろ。』

思い通りにならないから仕方ないなんて、今の俺達の年齢で本気で思ってる訳がない。そんなことを考えてたら炭治郎は周りの人間にこんなにも『優しくて頼れるいい人』と思われていないだろう。炭治郎は自分のやり方が間違ってることを心の奥底では分かってるはずだ。

その日の放課後、何も行動を起こさなかった炭治郎がヒツメに話しかけに行った。

「話があるんだ。」

帰り支度で騒がしい教室の中でも、俺には聞こえている。俺は炭治郎もヒツメも好きだし大事だ。だからこそ、間違ってるなら言ってあげなきゃダメだと思うし、助けなきゃダメだと俺は思う。

「いいじゃん、一緒に帰ろうよ。」

2人は俺の言葉に安心したようだった。なんか付き合いたての気まずいカップルに助け舟を出したような気になる。くそ、ちょっと悔しい。

炭治郎は##NAME1#に、これまでの行動と乱暴したことを、謝った。ヒツメは黙って炭治郎の言葉を聞いている。

「以前と同じように一緒に居たい。」

ヒツメの音が揺らいで、期待に変わった。期待は裏切られてばかりなのに、ヒツメはまた期待してる。放っておけないのは分かる。今まで炭治郎に頼りっぱなしだったから。大事な友達だから助けなきゃいけないと思うのも分かる。

だけどヒツメのそれは幼なじみの域を超えているような気がする。多分自覚してないのかもしれないけど。

俺も人の事を言えたもんじゃない。ヒツメがその気持ちに気づかないなら、もしかして俺と付き合う事を選ぶかもしれないなんて、相当汚い事を考えてる。
偉そうに言っておいて、俺も結局はヒツメが欲しかっただけなんだろう。


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