隣人
□日常
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日常
通勤や通学でせわしく行き交う車たち。その中の一人である央二は、赤に変わってしまった歩行者用信号機を見て、しまった、と後悔の念に襲われた。
最近では日課のようになってしまったこの失態。
央二の家からこの横断歩道にくるまではスムーズにこれるものの、いつもここの信号で足止めをくってしまう。
遅刻になるか否かの際どい時間に登校している央二にとって、たかが数分の足止めでも痛い。
早く起きれば話は早いが、朝に極端に弱い央二にそれは至極無理な要求で。
国道沿いにくれば少しは時間も短縮されるのだが、いつもの癖で裏道をきてしまうというなんとも悲しい落ち。
こうも毎日、同じことを繰り返す自分の学習能力のなさには哀れみさえ感じられる。
人口86万人余りの田舎、
中学の頃は「南部の王子」と名を流行らせ、
現在は廃部寸前の軽音楽部に所属する高校二年生。
こんなんだからお陰様で青春の「せ」の字もないような高校生活を送りつつ、ひそかにバンドでも組んでデビューなんかしちゃいたいだなんて、全くもって馬鹿げた夢を抱いている。