小説・すばせか
□オレの大切なモノ
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「参加者はみな、一番大切なモノをエントリー科にして死神のゲームに参加しているんだ」
羽狛さんにそう言われた時、オレは実感が無かった。
大切なモノ・・?
本当に、オレにそんなモノがあるのだろうか・・?
だけどゲームに勝って、エントリー科が帰ってきた時、分かった。
大切なモノは記憶・・すなわちそれは、自分自身を構成するアイデンティティー。
つまり自分自身だって・・。
その時オレは妙に納得した。あぁ、やっぱりなって・・。
だけど、次のアイツの言葉で、オレの幻想は・・打ち砕かれた。
「次のエントリー科を没収する。次のエントリー科は・・美咲四季!」
「・・なっ!?」
その時、オレは理解した。
持論として持っていた『世界はオレだけでいい』という言葉。
この言葉は、この一週間、シキと一緒に過ごしていて、変わってしまっていたことに・・。
オレは本当に・・
本当に・・他人を・・シキを、大切なモノと思っているのか?
頭では理解できなかった。信じられ無かったし、嘘だとも思った。頭ではそう思っていた。
でも心では・・理解していたみたいだ。
「やめろ・・やめろぉぉぉ!!」
やっと出てきた言葉は、自分では考えられない程震えていた。
これが、大切に思うということなのか・・?大切に思うというのは、こんな感情なのか・・?
やっと理解した感情なのに・・いや、やっと分かった大切なモノなのに・・奪われようとしている・・。
そんな・・そんなのって・・。
気がつくとオレは渋谷にいた。
・・今度は・・負けられない。何が何でも・・負けられない。
必ず・・勝ってやる!
・・シキのために・・