連載2

□君臨
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「オレだって無理だぜ。元々サラサを初めてバーサク状態にしたのがセフィロスだからな。強い奴と戦いたいっていうサラサの欲求を満たせるのがセフィロスくらいしかいないんだよ」
「……そうか」
「つーかオレも暴れてェ!」

「じゃあ私と遊ぼうか」

「「「ッ……!?」」」

唐突に割り込んできた声にはっとして発信源を探せば、わりと近いところにサラサが立っていた。
彼女の獰猛な捕食者の笑みから目が離せなかった。離せば喰われると本能が察しているからか、視線を反らすことを許しはしない。

「サラサッ……! い、いつからそこに?」
「遊ぼうか。仔犬」
「ちょっ無理無理無理! 無理だって!!」
「安心しろ。殺しはしないさ」
「ひっ……!!?」
「なに、修行だと思えばいい。アンジールと再会するまでに少しくらいは強くしてやる。セフィロスのような英雄になりたいんだろう?」
「そ、そりゃそうだけど!」
「鍛えてやろう。ふ、ふふふ」

赤い舌でぺろりと唇を舐めたサラサは狼さながら、欲望に直結するような艶然とした笑みを浮かべる。ぞくり、と背筋が粟立つ感覚にクラウドはちいさく震えた。

「目ェ据わってるって!」
「問答無用!」
「ぎゃ―――!!」

爆風が舞う。ザックスの叫び声が聞こえた。サラサの獲物はザックス一人らしい。
それはこのメンバーの中で一番強いからということなのだろうか。だけれどなんとなく、弱い獲物をいたぶるような、そんな印象を受けてクラウドは、そんなまさかな、と頭を振った。

「屋敷にいるセフィロス呼んできたほうがいいんスかね」
「オレ、あいつ苦手」
「そうか? カオス側にいるセフィロスよりはまともだと思うが」
「まともって……のばら何気にひどいっスね」
「のばら言うなっ!」
「オレは嫌だぞ」

かつて盲目のままに憧れていた時代のセフィロスが屋敷にいるのだが、クラウドは必要以上に会話をしようと思わなかった。それはこの先彼が仕出かす未来を知っているからでもあるし、彼を見ていると大切な人を失った時の痛みをどうしても思い出してしまうからだ。

「なぁ誰か呼びに行かなくていいのか?」
「「「あ」」」

ザックスが吹き飛ばされるまで後5秒。
クラウドが力を持て余したサラサに襲われるまで後10秒。
セフィロスが駆けつけるまであと――……。






異世界に君臨せし戦女神の命や如何に


end
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