連載2

□手繰り寄せて、コトバで
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けれどどうしてだろう。そうして思えば思うほど、願えば願うほど込み上げてくるこの漠然とした不安は、一体何なのだろう。

「セフィロスは……」
「なんだ?」
「……いや、」

お前もいつか、消えてしまうのか。私を置いて。
頭をもたげる小さな不安を口にしようとしてサラサは慌てて飲み込んだ。
以前居た世界でもそうだった。両親や兄姉を失ったのを切欠に、親友を失い2つめの家族、恋人を、仲間を失ってしまった。そしてこの世界でもまた、仲間のジェネシスやアンジールが離反して。他に親しい人間といえばセフィロスしか心当たりがない。
だから。

ーー次はお前なんじゃないのか。

言葉にすれば本当にそうなってしまいそうで末恐ろしい。

「……なんでもない」
「おかしな奴だな」

小さく笑ったセフィロスに疲れは見えても翳りはない。
安堵したサラサは歩み寄って背後から男に抱きついた。首に手を回し肩口に額を押し付ける。
仄かに香るシトラスの香りに、腕に抱き締めている温もりは本物でそれは密かにサラサを安堵させてくれた。

「どうした?」
「……私はお前をひとりにはしないよ」
「……」
「絶対に独りにはさせないから」

みっともなく震えた声にセフィロスは気づいただろうか。気づいて欲しいとも思うし気づいて欲しくないとも思う。前者は女の甘えで、後者は下らないプライドだ。

「……当然だ」

ややあって聞こえた憮然とした声にサラサはうっすらと笑みを浮かべる。

大丈夫。彼は消えない。ここに、いる。

「これから任務だ。2rdたちと一緒にレジスタンスを殲滅してくる」
「そうか。気をつけて行ってこい」
「ん」

最後に温もりを堪能するようにぎゅっと抱き締める。名残惜しいが時間は迫っていた。

「サラサ」
「ん―?」
「帰ってこい、必ず」
「!」
「オレはここで待っている」

セフィロスも自分と同じ不安を抱えていたのだとサラサは気付いた。
今まで帰ってこいなど言われたことなどない。帰ってくるのが当たり前だと思っていたからだ。それはジェネシスにもアンジールにも同じで。けれどそれが覆されてしまった。当たり前ではないのだと気付かされてしまったから。

「セフィロス」
「ああ」
「すぐに戻ってくる」
「待っている」

泣きそうな表情を見せないためにサラサは男の顔を見ずに退室する。背後に感じる視線はドアが閉まるまで続いていた。

ーー大丈夫だ。

きっともうすぐ全部解決する。
二人は帰ってくるし、セフィロスは消えない。
そしたらまたみんなで馬鹿騒ぎが出来る。

ーーこの不安は杞憂だ。

自分にそう言い聞かせて歩けば、来た時とは逆に足取りは少しだけ軽くなった。






end
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