連載2

□英雄
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化物だ、俺は。

彼は酷く疲れきった声でそう言った。ベッドの縁に腰をかけ俯いた男の表情は影になっていて良く見えない。けれど声と同様に疲れきった表情をしているのではないだろうかとサラサはなんとなくそう思った。
いつからか英雄と呼ばれるようになった彼。
英雄という言葉こそ彼の為にあるようなものであり彼の代名詞でもある。
賞賛と羨望を集めていながら、彼はその言葉に誇りを持っていなかった。英雄というその言葉の裏にある意味を知っているからだ。
だからジェネシスが事ある事に英雄になるのだという世迷い言をいつも鼻で笑っていたのだ。
英雄――それは強さの証。人が本来持つ以上の力を持った人を特別扱いする言葉。
裏を返せば“英雄”という言葉を使って一線を引いていると言ってもいい。
自分たちとは違う。人並み以上の力を持っているのだから、人ではない、と。
いつからか英雄という言葉の裏にはそんな皮肉と悪意が見え隠れしていた。
きっと彼を英雄と称え憧れる人間にそんなつもりはないのだろう。言葉通り強く、そして立派な人間だと捉えているに違いない。
その悪意は、彼の功績を妬んだ人間によるものだ。皮肉と、嫉妬を持って“英雄(バケモノ)”と彼らは蔑む。
実に醜悪で愚かだ。けれど彼は、サラサのように嗤い飛ばさなかった。
男は優しかった。またその大きな体躯からは想像出来ないほど繊細でもあった。
だから彼らの悪意をそのまま受け止めて、それを面に出すことを知らないから内側で傷ついているのだ。
化物だ、なんて悲しい言葉を紡ぐくらいに。
表情の変化に乏しいせいもあって何を言われても傷ついているように見えず、それが余計に彼らの愚かな戯言を助長させる。
そうして積み重なった傷が彼をここまで弱らせた。
本来ならきっとサラサにもこの弱味を見せることはしなかっただろう。彼の矜恃がそれを許さないはずだ。けれど今こうして内面の傷を吐露する彼は矜恃すらぞんざいに扱えるほど弱っているのだろう。
そう思うと不謹慎だけれど愛しく思うし、弱味を見せる相手に自分を選んでくれて嬉しくも思う。ジェネシスやアンジールにはきっと言えないことだから。

「セフィロスは本当にそう思うの?」
「俺は……」

強くなりたくて強くなったわけではない。
気づいたら人より抜きん出て強くなっていた。
周囲が助けを求めるから助けた。守って欲しいというから守った。
そうしたらいつの間にか英雄という言葉を送られた。
引き返すことなど出来なくて。

「ねぇ、セフィロスは私を愛してる?」
「何を、いきなり」
「答えて。愛してる? 愛してない?」
「愛してるに決まっているだろう」
「ならセフィロスは大丈夫。化物なんかじゃないよ」
「何故、」

簡単だよ。
そう言ってサラサは笑った。
男の額に、両頬に、鼻に、唇に、キスの雨を降らせる。

「化物は愛なんて知らないんだよ」
「……」
「愛を紡ぎ愛を唄うのは、人間だけ」
「鳥や、動物は」
「生殖に伴う求愛は本能でしょう? 愛とは言わないよ」

だから貴方は人間だよ、セフィロス。






英雄

end






くだぐだorz
何を書きたかったかなんてサラサに化物は愛を知らないと言わせたかっただけ。
弱ってるセフィロスとかマジおいしい←
 

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