連載2

□さぁお手を拝借
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「しかしこの私に面と向かって腹の中に蝮を飼っているとはいい度胸だな。勇気があるとも取れるが、無謀とも言える」
「ふん。蝮どころか悪魔でも飼っていそうだ」
「ほぅ? なかなか面白い見解だな。悪魔か、アクマ、ねぇ……。まぁいい。お前の要望通り“気色の悪い笑み”とやらは引っ込めたぞ。何ならお前の望むような性格でも演じてやろうか。面白そうだ」
「くどい! オレの護衛にお前はいらん! いいから出直してこい」
「舐めるなよ小僧」

一瞬で距離を詰めたサラサは男の首筋に鋭く尖ったロッドの尖端を押し当てる。背後でレノが「オレのロッドォッ!?」と叫び、ツォンが懐から銃を取りだそうと胸元を漁るがそこにあるはずのものがない。逆にサラサに銃口を向けられて動きを封じられる。
ソルジャーは銃を持たない。彼女が持つ銃はツォンにとって見覚えのあるものだった。――つまりその銃はツォンのものである。

「いつの間に……」
「私がテロリストならお前達の始末は10秒もかからないな」
「貴様……雇い主に歯向かうというのか?」
「はっ。雇い主はプレジデント・神羅であってお前ではない。そんなこと百も承知だろう?」
「ッ……このことを報告すれば、」
「構わんさ、それでも。少しソルジャーにも退屈しはじめていた所でね。英雄と戦えるならまだしも、弱い連中、弱い敵にうんざりしていた所だ。その点、神羅を敵に回せば、それこそ死ぬまで戦える。雑魚の軍隊だろうが数をこなせばそれなりに楽しめるだろうからな」
「お前……」
「退屈、退屈、退屈。この世は退屈と暇で満ちている。少しくらい楽しもうとして何が悪い」
「……その仮面も、か?」
「当然だ。お前だって言っただろう? 人畜無害な振りをしていると。確かにそうさ。だがそんな私を馬鹿みたいに――いや、いっそ愚かなまでに見下す奴もいるわけだ。この仮面に騙されて。『これが1stなら己のほうが』と。仮面を仮面と見抜くことも出来ず、上辺だけで取るに足らないと判断し己のほうが上だと、そう思う奴もいるわけだ。そんな奴に、牙を向いて見せたら? 実に愉快じゃないか? 現実を突き付けられた時の、あの絶望に縁どられた瞳。己の絶対的な意味のない自信が瓦解する瞬間の蒼白な顔。実に滑稽で愉快だ。そこからじわじわいたぶるのも愉しいが、な」

ペロリ、と赤い舌が唇を舐める。ただそれだけの動作であるにも関わらず、それのなんと妖艶なことか。

「退屈しのぎに私はそうやって遊ぶ。もっとも遊べないやつもいるが、な」

そう言ってサラサはツォンをちらりと見た。隣で戸惑いこそ表面に出していないものの内心で相当戸惑っているだろうこの男は、サラサに遊べないと烙印を押された男である。

「それを何故、オレに言う?」
「お前には言ったほうが面白そうだからだ」
「ほう……?」
「――ゲームを、しないか?」

形の良い唇から紡がれた言葉は如何にも退屈を持て余す人間のそれでルーファウスは眉を寄せる。

「ゲームだと?」
「そう、ゲームだ。とっても楽しい――な」

そう言ってサラサは笑う。悪魔のような蠱惑的な微笑だった。





さぁお手を拝借
楽しい愉しいゲームをしましょう
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