連載2

□まだ見ぬ貴方へ想いをはせる
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「何をしている?」

突如響いたその声にセフィロスはびくりと肩を跳ねあげた。ラボの入り口には宝条が立っていた。男はセフィロスの手にした資料を一瞥すると、ふん、と鼻で笑った。

「勝手にみたのか」
「……見られたくないものを置いておくほうが悪い」
「まァいい。その資料を返したまえ」
「これはなんだ?」
「見ての通りだが? 字も読めなくなったのかね?」
「違う! こいつの目だ! この目はソルジャーの目だろ!? あんたソルジャーはオレひとりだっていったじゃないか!」
「勿論『ソルジャー』はセフィロス、お前ひとりだ。今はな」
「今?」
「彼女もお前と同じ『特別』だ。神羅がお前をソルジャーと認めたのなら次の段階から彼女もソルジャー候補になる。それだけだ」
「ソルジャー候補……」

ならば自分が神羅に認められたソルジャーになれば彼女に会えるのだろうか。

「彼女に会いたいか?」

その言葉に心臓がどきりと跳ねた。はっとして写真から顔を上げ宝条の顔を凝視する。写真を持つ手に自然と力が篭った。

「……どういう風の吹きまわしだ? 今まで科研の連中にしかあわせなかったくせに!」

この神羅ビルに来てからも来る前も研究室と自室以外出歩くことを禁じたのは他でもない目の前の男である。

「彼女は『特別』だからな」
「『特別』だといいのか?」
「ああ。新しいデータも欲しいしな」

特別。
その言葉が胸に響いた。
彼女は『特別』で『特別』だから会える。
再び写真に視線を落とす。自分と同じく『特別』な彼女はどんな声をしているのだろう。瞳の色は自分と同じ緑色なのだろうか。髪の色は、肌の色は。

「……会いたい。会いたい!」
「よかろう」
「いいのか!?」
「ああ。だがセフィロス。彼女に会うにはお前は認められなければならない。神羅に最強のソルジャーだということをな」
「それは明日からのウータイ戦のことを言っているのか?」
「わかっているのなら早く部屋に行って休みたまえ。明日は早いのだからな」
「いつ会わせてくれるんだ?」
「結果しだいだ。さあ、もういきたまえ」

急かすように促されてセフィロスは資料を置き足早に研究室を後にした。

「……あいつめ、写真を持っていったな」

残された宝条は置かれた資料のなかに写真がないことに気づきそう呟いた。そこに大切な資料を持っていかれたという怒りはなく、それどころか愉快そうに口端を釣り上げる。その隙間から彼独特の奇妙な笑い声が漏れた。

「いずれ会わせてやろう。お前の『母』に」

クツクツと男は嗤う。
その呟きを知るものは誰もいなかった。



end
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