† 紅の月夜 †
□† 第1夜:黒主学園夜間部 †
2ページ/2ページ
──私立黒主学園。宵の刻──『月の寮』前。
「はいはいはい、下がって、下がって」
優姫が叫んでいる。それに女子たちは「ちょっと押さないで!」、等と騒いでいる。
僕はそれをボーっと見る。
「ディ・クラスの皆さんはもう門限ですから自分の寮に帰って」
──この全寮制の名門校黒主学園には普通科……ディ・クラスと夜間部……ナイト・クラスがある。普通科と夜間部は昼と夜を分けて一つの校舎を共有していてクラスが入れ替わるこの時間は混乱状態に陥る。
「ちょっと! 壬夜も手伝ってよっ!」
「えー」
僕は面倒くさそうな声を出す。まあ実際そうだし。
──ガシャン。門が開く音がすると一層騒がしくなる。
「はあ……。手伝うか……」
そう言って僕は優姫に近づく。
「おはようーっ女の子たち。今日も元気でかわいいねぇ」
アイド……否。藍堂先輩が言う。すると女子たちが「きゃああああっ」と叫ぶ──って、優姫が押されて……転びかけている。
「優姫っ」
僕が行こうとした、その時だった──。
「大丈夫かい、優姫。いつもご苦労様」
「……枢先輩!」
すると優姫は急いで立ち上がる。優姫は女子たちに睨まれている。