short

□頼りにしてます、
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「プールやあ」


「謙也、走ると滑るから気をつけて」


「おう」



名前と久々のデート、っちゅーだけでテンションが上がっとるのに名前の水着姿なんて嬉し過ぎる!

ホンマ可愛えなあ。



「先に何か飲もうか。私ちょっと飲み物買って来る」


「あ、俺行くわ。」


「いいよ。じゃあ先に浮輪膨らましてて」


「わかった‥‥、有難な!」


「うん」



それだけ言うと名前はさっさと自販機に向かってしまった。

何や悪いことしたなあ。
後でアイスでもおごらなアカンわ。



「(とりあえず、帰って来るまでに浮輪ふくらまそー)」



浮輪は交代交代で使う約束なので一個しかない。これなら帰って来るまでに何とか膨らませそやな!



「ふーっ!ふーっ!」



空気を入れては抜けないように口を離し、また口を付けて空気を入れる。



「すみませーんっ」


「はい?」



頭上から聞こえた声に、浮輪から口を離し上を見上げた。何や‥‥知らん女の子二人が笑顔でおる。



「何か?」


「一人ですかあ?よかったら、一緒に遊びません?」


「私ら二人で寂しくてー」


「あー‥‥すみません、俺彼女と来てるんで」


「えーっ!彼女と?見当たらへんけどね」


「ね!どこにおるんですか?」


「飲み物買いに行ってて‥」


「帰って来るまで私らと遊びましょーよ」


「ええ‥‥」



これは困った。所謂逆ナンか。白石がよう被害に遭うアレやな。いつだか、流石にキレた白石が「女には間に合ってます」とか言うたらしい。マジか。あいつ凄いわ。しかし、俺にはそんな勇気微塵もない。

どないしよ‥。



「何か用?」


「(あっ!)」



ペットボトルを二つ持ちながら臆することなくこちらに来たのは他でもない、名前だった。



「あんた何なん?」


「私の彼氏に何か用かって私が先に聞いてるんだけど」


「はあ?」



雲ゆきが怪しくなって来た気がするんは俺の気のせい‥?



「大して可愛いないんやから、痛い目見る前に帰りや」


「はははっ」


「‥‥‥」



呆れた、と言わんばかりのため息をつくと、一つペットボトルを開け始める。



「名前‥‥?」



俺が問い掛けるやいなや、名前は開けたペットボトルの中身を二人にかけた。



「‥‥!」


「今すぐ帰れ」


「‥‥っ、何やのホンマ」


「気分悪いわ‥。行こ」


「おお‥っ!」



逃げるように去って行った二人に感嘆の声をあげる。名前凄いわ!



「謙也、」


「あっ‥‥はい」


「お茶でいい?ジュースかけちゃったからさ」


「‥‥‥」



逆ナンを断り切れなかった事を咎められるかと思うたのに、全然違くてビックリした。



「‥おん、おおきに」



笑いながらお茶を差し出す名前に俺も笑いながらお茶を受け取る。名前の心の広さには感服です。




頼りにしてます、

(でもたまには俺だって、)
(頼りにされたいんだよ)




fin.


→あとがき



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