short

□被害者は私
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「名字ー、ちょお付き合うて」


「うん、わかった」



謙也の呼び掛けに、一旦荷物を置き、部室を出ようとした。


したんだけど‥‥‥、



「待ちや」


「白石‥‥」


「今からもう部活やねん。で?何処行くん?名字には仕事してもらわな」


「パパッと行ってパパッと帰って来るわ!浪速のスピードスターやっちゅーねん」


「それは謙也だけや。名字は浪速のスピスタちゃうねん」



私を間に挟み、何やら火花を飛ばし合う二人。

ちょっ‥‥しかも白石、腕掴む力強い。痛いんだけど。



「白石!名字の腕掴みすぎっちゃ」


「あ、ホンマや。すまん」


「痛くなか?」


「‥痛くないけども」



今度は千歳?とため息をつきたくなる所をぐっと我慢する。

そうだ、千歳は助けてくれたんだから。



「‥つか、そういういさかいが名字困らすってオドレらわかってへんやろ」


「男は鈍いんやからー」


「はあ?俺は名字が仕事を控えとること考えて止めたんやで」


「俺は、名字と飲み物買いに行こうとしただけやし」


「つまらんいさかいやんか!」



鎮火するかと思われたいさかいは、ユウジを巻き込み再び加熱した。

あーもー、収集つかないなあ。



「先輩らがモメるんが悪いんや‥‥。名字さん、俺打ちたいんでちょお付き合ってもらえます?」


「え?うん。じゃあ行こっか」


「あ、待ってやー!ワイもワイも!名字とウォーミングアップしたいわー!」


「お前はタコ焼きでも食うとけ」


「何でや!ワイも打つんやもん!」


「ぐえっ」



不意に抱き着いて来た金ちゃんの力強さにお腹がキリキリと痛む。



「名字さん痛がっとるやろ。離せや」


「いーやーや」


「離せ」


「いーやー」


「ちょっ‥二人まで喧嘩してどけんすると?名字が一番困るばい」


「そうよ、金太郎さん、光!これ以上名字困らせたらアカンわよ」


「うっさいっすわハゲ」


「ハッ‥‥‥‥‥ハゲは銀さんやない!!」


「なっ‥‥」



財前の一言に小春がぶちギレ、更には師範までをも巻き込み喧嘩が始まった。

てか金ちゃんよ。痛いから離れておくれ。



「‥小石川、助けてよ」


「え?ああ‥‥寧ろ関わらん方がことが大きならんかなあ、なんて」


「く、くうっ‥‥!」



確かに正論過ぎる小石川の発言に涙をのむしかない。

これ何なの本当。
何か皆、気持ちは嬉しいけどさ‥‥嬉しいんだけどさあ!




被害者は私

(あっちからもで)
(こっちからもで)
(ため息しかつけないよ)




fin.


→あとがき



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