short

□馬鹿にしないで
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「名前ーっ!」



4時間の部活後にも関わらず、金ちゃんは相変わらずの調子で走って来た。



「お疲れ様、金ちゃん」


「おおきに!なあなあ名前、ワイ凄かったやろ?見とった?」


「うん、見てた。スーパーウルトラグレート‥‥何とか」


「スーパーウルトラグレートデリシャス大車輪山嵐!!ええ加減覚えてや〜」


「ごめんごめん。でも、凄かったよ」


「そやろ?!」



名前は未だに覚えられないが、とにかくあの技は凄い。あの財前がビックリするのもわかる。



「金太郎、あんまし名前に迷惑かけたらアカン言うとるやろ」


「かけてへんもん!な!」


「うん、大丈夫だよ」


「勘忍な」



白石の言葉に首を振った。金ちゃんが迷惑だなんて思ったこと、一度もない。



「白石ぃは怖いわ‥‥名前は優しいのに」


「名前が優しいが故に金ちゃんが甘えんねやろ?俺は飴とムチのムチやねん」


「怖いわ!毒手も嫌やし‥‥」


「金ちゃん、そんな言い方は白石に失礼だよ」


「えーっ!ホンマやもん」



ぶーっと頬っぺたを膨らませる金ちゃんに苦笑いをする。わからないでもないんだけどね。



「あ。そや、名前に言いたいこと有ったんや」


「そうなの?とりあえず部室行こうか」


「おん!」



嬉しそうに笑う金ちゃんに笑いかけ、手をひいて部室へと向かった。



「何やすまんな‥‥金ちゃん、ホンマに名前のこと気に入っとるからさ」


「ううん、大丈夫。有難ね」



白石に耳打ちされた内容に、私も耳打ちで返す。



「ああああ!」



不意に私と白石の間に割って入って来た金ちゃんに距離を取る。

どうしたの、金ちゃん。



「白石ぃ!さっきから名前に何か近すぎやで!」


「そ‥そんな気は無かったんやけど‥」


「ある!!ワイは名前と結婚するんやあ!」


「‥‥‥、」



金ちゃんの衝撃発言に部室にいた全員が目を丸くした。



「‥ふふっ、」


「な、何で笑うんや名前!ワイは本気なんやでー!」


「ふふ、うん。有難うね」


「金ちゃんは大胆やなあ」


「男前っちゅー話や」


「おもろいおもろい」


「ゔーっ‥‥」



苦虫を噛み潰したかの様な金ちゃんの顔に思わず笑ってしまう。



「(何でなんやああ!)」




馬鹿にしないで

(歳とか身長が)
(離れてるからって)
(こっちは本気なの!)




fin.


→あとがき



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