手の甲にキスをした。
□崩壊回路
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「はっ?」
電話越しの渡邉先生につい、聞き返してしまった。
いや、そんなバカな。
『とにかく、今からすぐに来い!ええな!』
「‥‥」
ガチャン、と一方的に切られた電話を静かに置く。
今何かを冷静に考えることは不可能だった。
「(何が起きたんだよ、)」
近くにいたバトラーを呼び、車の手配をする。財前が今いる病院には走って行くより、車の方が早い。
「今日のお前は慌ただしいの」
「すまん爺、昼ご飯は適当に外で食べる。爺は母と何か食べてくれ」
「おい希望っ、」
爺の制止も聞かず、私は家を飛び出した。すぐ前に待機してある車に慌てて乗る。
「急いでくれ」
「かしこまりました」
年配のバトラーは小さく頷いたかと思うと、物凄いスピードで車を走り出した。
ちょっ‥‥何故揺れないんだこの車は。
「運転上手いね」
「いえ、この車が特殊なのです。万一の場合、猛スピードで家を後にしなければならない場合、揺れてお嬢様が酔われては大変だと‥‥ご主人様がお造りになられたのです」
「父凄いな」
確かに高校の頃は機械工学を主に学んだと聞いたが、まさかそんな発明まで出来るなんて。
「‥‥‥そうだ!そんなことより、目的地にはあとどのぐらいでつく?!」
「もう間もなく到着いたします」
「よし、」
普通の速度で行けば、15分近くかかる道のりを約2分程度とはね。飛ばしてもらった甲斐があったよ。
「‥‥到着いたしました。どうぞ、」
「ん」
「私はどうした方がよろしいでしょうか?ここに残っているほうがよろしいですか?」
「ああ、すまんが残っててくれ。昼食先を決めといてくれると助かる。」
「かしこまりました」
年配のバトラーに小さく頷き、私は急いで中へと入って行った。
「(‥‥305号室、か)
ポケットから小さな紙を取り出し、財前の部屋番号を確認する。急いで行って、何が起きたのか確かめなければ。