short
□赤い顔は
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「名字っ!」
俺に呼ばれて振り向いたのは名字。唐突だが、俺はこいつが好きだ。小春の好きとはちゃうねん。
女として、好き。
「なあ、ちょっと話あんねんけど」
「話‥?ごめん、私先生に呼ばれてんだわ」
「‥さよか‥」
名字の言葉にがっくりと肩を落とす。少しでも話せたらなあ、なんて思うたのに。
「あ‥‥また後で、話しよう」
「ん。ほな、」
「じゃあ」
職員室へと走って行った名字を見送り、ため息をついた。名字は鈍い。何で俺が呼び止めたかとか何もわかってへん。
「(好きなのに‥)」
うー‥‥と一人、唸りながら俺はクラスへと足を進めた。
ある決心をしながら。
◇◆
「失礼しました」
職員室から出て、急いで一氏のクラスへと向かう。自分でもわかる、全然可愛くない反応をした。
「(もうちょっと何かあっただろ、私の馬鹿)」
一氏が話しかけてくれるのは嬉しいのに、素直に喜べない自分が憎らしい。もっと素直にならないと、嫌われてしまう。
「一氏っ」
「名字、」
私を見て笑ってくれる一氏に心なしか安堵のため息がもれた。
「話‥何かあったんだよね。何?」
「ああ‥‥ちょお来てや」
一氏に言われるがままに、着いて行く。段々と人気がない所にやって来た。一体何の話なのか。
「こんな所まで来るもん?」
「‥‥‥」
ああ、言ってから、しまった!と後悔をした。また可愛くない聞き方をしたよ。私アホだな‥。
「唐突で、マジびっくりするかもしれへんけど」
「‥うん」
「俺、名字が好きやわ」
「‥‥は」
一氏の言葉がゆっくりと中に浸透する。
好き‥‥、一氏が、私を好き‥。
「‥‥‥」
もふっと顔が熱くなるのを感じた。今の私の顔は真っ赤に違いない。何これ、恥ずかしい。馬鹿じゃないの。
「‥その反応は、ええって受け取っていい?」
「‥‥‥」
一氏の言葉に、私を顔を赤くさせながら黙って頷いた。
赤い顔は
(君を好きだと言う)
(何よりの証拠だった)
fin.
→あとがき