short
□黄色い君へ
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「謙也あー」
「名前、」
部活が終わって、走りながら来てくれた謙也に飛び付く。
「名前!いきなり来るのビックリするやんか」
「だって謙也だからだもん」
「何それ?わからんわー」
あはは、と笑う謙也に私も笑いかける。私は謙也が大好きだ。今向けてくれてる笑顔も、優しさも、全部好き。
「謙也好きっ」
「わかったわかった。ほな、行こか」
「うん!」
差し出された謙也の手に迷わず私は手を重ねた。謙也の手は大きくて、私の手をいつも優しく包みこんでくれる。
あったかくて大好き。
「あ、部活お疲れ様」
「どうもー。今日も白石のメニューきつくてな。ホンマ大変やったわ」
「そっか‥‥大丈夫?」
「おん。有難な」
わしゃわしゃと頭を撫でられた。こういう撫で方でも謙也は優しい。
「おっと、」
「わっ?!」
不意に横から来た自転車に、謙也が私を引っ張り避けさせてくれた。謙也の匂いにドキドキする。いつまでもくっついていたいぐらい。
「ったく、ベルぐらい鳴らせや。危ないなあ」
「謙也、有難う」
「いいえ。ちょっと強く引っ張ってもうたけど‥‥痛ない?」
「うん、大丈夫」
「よかったあ」
本当に謙也って優しいと思う。
弟がいるからかな、って最初は思ったけど何か違うんだよね。
「‥謙也、」
「ん?」
首を傾げながら、こっちに振り向いた謙也の頬っぺたに軽くキスをする。
「えへへ、」
驚き固まった謙也に笑いかけ、私は先に走って行った。
「ちょっ‥‥待ちぃや!何やのいきなり!ビックリした‥」
「わあー」
すぐに追い付かれ、謙也に腰を捕まえられる。後ろを向けばすぐ近くに謙也がいる。恥ずかしくて後ろなんか向けないけど。
「名前」
「ん?」
謙也の顔が見えたかと思うと頬っぺたに柔らかい感触がした。
「けん‥‥えっ、」
「ははっ、名前のアホー」
至近距離の謙也の笑顔は私にはもたない。カッコ良すぎて。
だから照れ隠しに、私はもう一度謙也の頬にキスをした。
黄色い君へ
(私からのキスを)
(世界で一番)
(大好きなあなただから)
fin.
→あとがき