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□一方通行ラブラブコンビ
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「結婚を前提にお付き合いをして下さい」



大真面目な顔で言うには不釣り合いなセリフである。

食べかけのパンの存在も忘れ、私は目の前の彼を見た。



「ええと‥‥一氏、君?は?何だって?」


「ユウジでええ!せやから、結婚前提付き合って欲しいねん」



ああ駄目だ、この人。頭があちらの世界に逝ってしまってやがる。



「ちょ、タンマ。話がブッ飛び過ぎなんだけど‥‥私、君と何か関わり有ったっけ?」


「関わりないと人を好きになったらアカンのか」


「いや、そんな事言ってないけど、」


「俺はここずーーっと名前の事見てて、これが恋やと気付いたんや」



え、何この人。明らかに初対面なのにいきなり名前呼び捨てですか。どんだけ自由なんだよ。



「私は無理。一氏君の事よく知らないし」


「そやからユウジ言うとるやろおぉ!」


「‥‥ユウジの事よく知らないし」


「オドレは知る前の段階から俺をフるんか。知る為にも先ずは付き合おうとか思わんのか!」


「反対!ね、そこ反対ね?!知らないから付き合えない訳!」


「そや、それや。俺の大好きな名前のツッコミ。生で聞けて良かったー」


「くっ‥‥!ハメられた、‥‥のか?」



何だかこの人と一緒にいると調子が狂う。駄目だ、顔でも洗って目を覚まそう。



「待ちぃ!何処行くん?」


「ここじゃないどこか」


「ああ‥‥顔洗いに行くんか」


「うん‥‥ん?え、あぁっ?!」



聞き捨てならない発言に、ついユウジの胸倉を掴んでしまった。



「か、顔近い!」


「わ、ちょ、今唾飛んだ!」


「名前のも飛んだ!」


「んな事はいい!何で私が顔洗いに行くってわかったの!」



若干顔が近いからか、顔が赤くなっているユウジは少し戸惑ってから口を開き――



「そやからずーーっと名前の事見てた言うたやろ」



――とんでもない事をおっしゃりやがった。



「‥‥今のはアレですか、軽くストーカー発言ですか、そうですか、警察呼びましょう」


「ち、ちゃうわ!‥ん?いや、ちゃう事もないけど!」


「ないのかよ!」


「や、ほら、小春おるやんか?小春と一緒に今までの名前の行動を分析しとったから、」


「いやもう言うなストーカー」



全く呆れた。最近の若者はこれだから。
春になると気がフリーダムになって変質者が増えるって言うけど、今ようやくわかった。こういう奴が増えるのか。



「ストーカーちゃうぞ!」


「あーもー、はいはい、わかったわかった」


「待ちぃや!」


「ついてくんなぁあ!」




一方通行ラブラブコンビ

(わかった、自分ツンデレやな)
(ちげーよ)




fin.


→あとがき



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