シリーズNovel
□終わり、始まり。
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私より10センチ以上背が高い彼女に抱きつかれ、玄関先でこけそうになってしまって必死に靴箱で身体を支える。
「ちょ、和泉!?重いって!どうしたの?」
「どうしたの?じゃない!!アイツにフられたこと、どうして言ってくれなかったの!?」
ガクガクと私の肩を掴んで揺らす。
答える猶予を与えることなく、和泉は続けた。
“どうして知ってるの?”と聞くこともできない。
「だからやめとけって言ったのに…ッ!あんな最低男!」
出会った…付き合い始めた当初から“最低男”の称号を和泉から与えられていた私の元彼。
昨日フられたばかりの私は反論なんてできない。いや、する必要がなかった。今となっては――。
「昨日のことだし。今日言おうと思ってたよ」
「昨日メールでも何でもできたでしょ!?」
「あ〜うん、そうだね。…ゴメン。」
正直昨日はそんな余裕なかった。
彼にフられて悲しくて、ではない理由で。
節操無し!と言われるかもしれないけれど、“最低男”にフられた当日に、私は気になる男性ができてしまったのだ。
――私こそ、“最低女”なのかも…。