シリーズNovel

終わり、始まり。
6ページ/8ページ



「…ある人に慰めてもらった、から?結構早く吹っ切れたのかも」
「えッ!?ある人!?誰!!私の知ってる人!?」
「ん〜ん、知らない人だよ。この部屋のお隣さん。」


名字しか知らない、赤の他人。
今は…赤の他人だなんて思いたくないから、“お隣さん”と言ってみた。


「えぇ!?その言い方だと男!?でしょ!でしょ!?」


興奮した馬のようだ。突進してくるように、もの凄い勢いで問い詰められる。

多少、…大分おののきつつ、素直に答える。答えなきゃ首でも絞められそうだ。


「う、うん。男…だけど…」
「弱ってるところに付け込まれたんじゃないの!?大丈夫なの!それ!」
「…大丈夫だよ。別に付き合おうとか言われた訳じゃないし」


――口説かれた…ような気はするけど。


口説いてると思ってくれて構わない、みたいなことを言われた。
だけど実際彼にそんなつもりは無かったのだと思う。

必死になって私を泣きやまそうとしていることが分かった。
出してくれたヨレヨレのハンカチがそれを物語っている。



きっと慣れてなかったのだろう、目の前で泣かれることに。…慣れていても怖いけど。


泣きやまそうとして出した言葉が口説いているような感じになってしまって、それを私が指摘したから後に引けなくなった、そんな感じだった。






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ