シリーズNovel
□終わり、始まり。
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それに。
本当に口説かれていたのだとしても、嬉しかった。
“だらしない”姿の私を知っていて、あんな言葉を掛けてくれたこと。
他に掛ける言葉が見つからなかったのだとしても、あの時の私には何より甘く響いた、彼の言葉。
今思えばサラッと言えるような慰めの言葉ではないと思う。
和泉の言うように、弱ったところに付け込むつもりがあったのなら、もっと――、
「なんか…やけに嬉しそうに見えるのは私の気のせい?」
「…そう見える?うん、気のせいじゃないと思うよ。好きになっちゃいそうだもん」
「うわ…。昨日の今日でそれ?ありなの?」
――ありってことにしておいて欲しいかも。
心の底からそう思ってしまう。だって和泉には認めてほしいと思う、今回だけは。
呆れ顔で“どんな人?”と問われ、私は答える。
ありのままの私を否定しなかった人、と。
意味がわからなかったのか眉を潜めた和泉だったけれど、
直後に、認めてくれたのだと解る苦笑いを零した。
「まぁ…いいか。梨乃がいいなら。梨乃のそんな嬉しそうな顔、久しぶりに見たし」
「へへ、ありがと。進展あったら一番に和泉に紹介するね?」
進展させる気満々じゃない!と言った和泉はさっきと変らず呆れ顔で苦笑い。
「“最低男”じゃないことを祈ってる。梨乃はホント、男の趣味悪いから」
「一言余計。プラス余計なお世話」
憎まれ口を叩きながら、昨日の報告会。いつもの私のペースが戻ってくる。
そんな私の中心に、既に彼がいるような、そんな気さえしていた――。