シリーズNovel

終わり、始まり。
7ページ/8ページ



それに。

本当に口説かれていたのだとしても、嬉しかった。
“だらしない”姿の私を知っていて、あんな言葉を掛けてくれたこと。


他に掛ける言葉が見つからなかったのだとしても、あの時の私には何より甘く響いた、彼の言葉。


今思えばサラッと言えるような慰めの言葉ではないと思う。
和泉の言うように、弱ったところに付け込むつもりがあったのなら、もっと――、


「なんか…やけに嬉しそうに見えるのは私の気のせい?」
「…そう見える?うん、気のせいじゃないと思うよ。好きになっちゃいそうだもん」
「うわ…。昨日の今日でそれ?ありなの?」


――ありってことにしておいて欲しいかも。


心の底からそう思ってしまう。だって和泉には認めてほしいと思う、今回だけは。



呆れ顔で“どんな人?”と問われ、私は答える。
ありのままの私を否定しなかった人、と。

意味がわからなかったのか眉を潜めた和泉だったけれど、

直後に、認めてくれたのだと解る苦笑いを零した。


「まぁ…いいか。梨乃がいいなら。梨乃のそんな嬉しそうな顔、久しぶりに見たし」
「へへ、ありがと。進展あったら一番に和泉に紹介するね?」


進展させる気満々じゃない!と言った和泉はさっきと変らず呆れ顔で苦笑い。


「“最低男”じゃないことを祈ってる。梨乃はホント、男の趣味悪いから」
「一言余計。プラス余計なお世話」


憎まれ口を叩きながら、昨日の報告会。いつもの私のペースが戻ってくる。


そんな私の中心に、既に彼がいるような、そんな気さえしていた――。






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ