シリーズNovel
□何度も何度でも、貴方と。
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出勤してデスクに座り、パソコンの起動時間に今日一日のスケジュールを頭の中でシュミレートする。
慣れた作業だとは言え、頭が痛くなるときだって…ある。
今日もそう。
偏頭痛とまではいかないけれど、なんだか頭が痛くなって、こめかみを押さえながら固く目を閉じた。
恋愛体質な私は瞳を閉じると、瞼の裏に好きな人の姿が出てくる。
好きな人の姿を瞼の裏で再生しながら、憂鬱な気分を仕舞いこむのだ。
そうすることで仕事をする気力を身体に充填して、なんとか一日やり過ごすことができていた。…今までは。
今日は瞳を閉じても出てきてくれない、その姿。
どうしてかは分かっていた。
今日は彼に――朝会えなかったから。
「梨乃?」
同僚の声が私の堅く閉じた瞳をこじ開けさせた。
「あぁ、おはよう晟那」
まだ始業前だからか声が明るい晟那。それとは逆に私の声は暗い。
「おはよう。どうしたの?頭痛?」
「う、ん…、ちょっと」
朝から疲れた顔をしているだろう私とは対照的に、晟那は元気はつらつのようだ。
何かイイ事でもあったのだろうか?…どうせ彼氏絡みだろうから、聞くのはよそう。
曖昧に返事をし、再び目を閉じた私に届く椅子の音。
晟那は同僚を気にかけてはくれるけれど深く踏み込もうとはしてこない。
私だけではなく、みんな平等に。
同僚の中でも私は晟那に一番近いと思う。
友達、と言っても多分晟那も否定はしない。
だけどそれでも、ちゃんと心を開いて…ううん腹を割って話そうとはしてくれない晟那。
だから私も踏み込むことに躊躇いを覚えてしまうのだけど。