シリーズNovel
□昼下がりの幸福。
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――いやいやいや!!
「お前は俺のかーちゃんか恋人かなにかか!?ヒトんち勝手に上がり込んで、あまつ勝手にメシつくって…男のする事じゃねぇぞ!気色悪ッ!!」
「あぁ!?何だと!?俺がお前の恋人?気色悪いこと言うな!つーか俺がビックリだよ。お前が味噌とか卵とか買ってる事自体がな。彼女にでも作ってもらう気だったのか!?」
開いた口が塞がらない。
逆ギレとも言えるソイツの勘違い甚だしい反論に、俺は仰け反った。
「だから何の話か分からない、つってんだ!俺の家でも食材くらいあるんだよ!!俺は何か!?かすみ草でも食って生きてんのか!?毎日外食なんてしてらんねーんだよ!」
「佳治お前…料理なんてできたのか」
その言葉、そっくりそのままお前にに返してやりたい。
「寮でもしてただろ。俺はお前が料理できるって事実のほうがビックリだよ」
「そうだっけか。というかコレは俺が腹減ったから作っただけだ。ついでだからお前の分も、な。…余計なひと言は見逃してやる」
ものすごい上から目線である。
どうしたらこの状況で「見逃してやる」などと言えるのか。
俺の為じゃないにしてもソイツが手料理、なんて状況が信じられないと言っているのに、それはありがたくもスルーしてくれるとのお達しだ。
しかもヒトの家でヒトの食材で、我が物顔で。なんとも心優しい友人だ。ありがた過ぎて涙が出そうだ。
「とりあえずメシ食ってからだ。腹へって死にそうだ」
色々と文句を言ってやりたいし、ツッ込みたいのは山々だ。…が、
「…了解」
コイツと話してるとツッ込む気が失せる。
ツッ込んでも意味が無いからツッ込まないように俺自身が無意識に止めているのだ。…無駄に疲れる。
朝から厳つい男と食卓を囲む事になるとは思っていなかった俺は、深い深い溜め息をついて洗面所へと向かった。
何とも情けない自分の顔が、洗面台の鏡に映し出されていた。