シリーズNovel

昼下がりの幸福。
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「そろそろ白状したらどうだ」


寝覚め最悪だったにも関わらず、いやだからこそ?この、意外にも、お世辞ではなく美味しいご飯に舌鼓をうっていた俺に、ヤツは至極不機嫌な声で尋ねる。
コイツに“白状”するようなことなど何もない、そう決め込んでいる俺に。

ご飯を食べ始めてからずっと無言で口だけ動かしていた俺は、低いヤツの声を聞いて、米粒を間違ったところに嚥下してしまい思いっきりムセた。


「ッゴホ、だから…」
「ここにきてまでシラをきるなんて男らしくないぞ」
「此処に…俺の家に来たのはお前だ」
「証拠もあがってんだ」


――証拠!?


まともに話させてもらえない上、俺のツッコミは見事にスルーし、たたみかけるようにギョッとするような事を言うソイツ。


証拠ってなんだ、証拠って!


それは、「彼女ができた」とか電話口で言っていたことの“証拠”、なのか?
だったらソレは事実無根で、そのような“証拠”なんてあってなるものか。


「物的証拠か状況証拠か目撃情報か、どれだ?」


なんだコレは。ここは取調室か!?
俺は一体何の嫌疑をかけられているというのだ。

休みの日に、自分の狭い部屋で、大男と二人きりで見つめ…睨み合っている。
もうホントに泣いてやりたくなる。泣き落しして帰ってもらうか。


「目撃情報と…状況証拠、かな」
「ほう、言ってみろ」
「目撃情報、其の一。居酒屋で女と二人きりで飲んでた」


――…ソレか…。


ため息が零れた。そして頭もカクンッと下がった。

勘違い甚だしい。一体どこからの情報なのか心底知りたい。


そんでもって“其の一”と言うからには…まだ他にもあるということだ。






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