ファンアル

□凍えの熱帯
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「……動きたくないんだ。あちこち、痛くてね」
心配そうに、こちらを覗きこんでくるきみの。
滲み出す不安を。
あえて、煽るみたいに言う。

「きみからしてくれる?出来るよね?」

ふふふ。
きみは驚いて。
蒼い眸を見開いて。

本当なら、冗談じゃない、って言うね。
照れて。
恥ずかしがってね。
……けれど今は、そんな自由もないでしょう?

ボクをあいするきみには。
ボクを繋ぎ止めたいきみにはね。

「……どうすればいい、」

躊躇いがちに。
目を伏せたまま。
きみはひくい声で言った。

「どう?それも考えるんだよ。何の為に仕込んだと思ってるの」

酷いことを、どんどん言ってあげる。
嫌いになって、ね?
アルヴィス君。

「わかった」

きみはボクの腰の上に跨ると。
こちらに、屈む。
目を閉じて。
唇を寄せて。
……なんて、ぎこちないキス。

そういえば、それすらも。
きみからして貰うのは、初めてだっけな。
いつもいつもボクから。
強引で。
無理やりに。
振り回してばかりだったね。

唇をあわせて。
おずおずと、舌が伸びる。
ちろ、とボクの舌を捕まえて。
先端を触れ合わせた。

それだけで、びく、ってなったきみは。
反射的に顔を引いてしまって、みじかいキスは終わる。
もう一度。
角度を変えて、くちびるを合わせて。
差し入れられた舌の先は、今度は逃げることなく絡んでくる。

教えてあげているのになぁ。
ちっとも身についていないね。
……じぶんから、って、そんなに恥ずかしい?
真っ赤になってるよ。

わざと、無反応を貫く。
きみは、どうしていいかわからないんだね。
ボクの舌のうえを、懸命に舐めて。
上顎の裏を辿って。
歯列をなぞる。

……ね?
きみが気持ちいいように、すればいいんだよ?
そんなぎこちなくって、本当に感じるの?

きみがくちびるを離すと。
ふたりの間を、透明な糸が繋いだ。
はぁ、って肩で息をして。
頬を薄紅に上気させて。

おやおや。
今ので、充分に気持ちよかったみたいだね。
自分からさせられる、っていうのが、興奮するのかな。

「……それから、どうするんだ」
「考えて」
「……っ、」

突き放すと。
酷く傷ついた顔を、一瞬だけして。
けれど。
健気にそれを押し隠す。

きみは何も言わずに、身体をずらした。
寝台の後ろのほうへ。
そこで、屈んで。

凄く。
凄く凄く。
……躊躇って。
逡巡して。
迷って。

それでも。

衣服のうえから、ボクのものに口をつける。

……ふぅん。
積極的だねぇ。
そんなに。
必死なんだ。

ボクが欲しいの?
……誇り高いきみが、自分から咥えてまで。
ねぇ。

布地越しに、歯をたてる。
はむ、はむ、って甘噛みを繰り返して。
もどかしいくらいの、緩い刺激をくれた。

ふふ。
……焦らすの?
可愛いよ。

いつもはおっきくなってるボクのが、ちっとも反応しなくて。
焦ってる。
もっとずっと必死になったね。
わかり易いきみの表情の変化が。
あんまりにも愛おしい。

未熟なきみ。
子供なきみ。
稚拙なきみ。

ボクなしじゃぁ、生きられないでしょう?

大好きだ。
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