ファンアル

□BlindBlue.
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瞼閉じれば、ふたりだけ残して。
音も立てずに、世界は滅びる。




BlindBlue.

寝台に横たわって見上げる窓には。
絡んだ蔦に、華の咲いた意匠の。
黒々とした鉄格子が嵌っている。

外は今日も曇り空で。
凪いだ海も、灰色に沈んでいる。
この辺りの気候の、それが特性なのか。
ここに来てから、晴れ上がった空を見たことがない。

「……ん、っ」

身体を起こそうとすると、あちこちに鋭い痛みが走る。
俺は夜着のひとつも纏わぬ格好で。
黒々とタトゥの這う膚を曝して。
その上だけで暮らせそうな、無駄に広い寝台に横たわっていた。

手首には拘束の跡がついて。
うすく血が滲んでいる。
胸元から腹部、その下まで。
掻かれた傷と、きつくくちづけた印が、点々と散る。

……そういえば。
昨夜は、随分と酷い抱かれ方をしたのだった。

痛みを振り切って、身を起こす。
夜通し抱かれて、夕方まで眠って。
そんな毎日を繰り返していたから、朝の景色は久しぶりだ。

日光に惹かれる植物のように、窓辺に這う。
指先でそっと触れて。
頬をつける。
火照った身体に、つめたい硝子の感触が心地よかった。

外は、風も無いようで。
全てが。
静かだった。

まるで永遠のように。
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