ファンアル

□七夕SS「逢瀬」
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七夕SS「逢瀬」

新月の夜に。
星空はひときわ輝きを増す。
ここは。
天のうえ。
雲よりもたかく飛ぶ城。
ちいさな窓から、幾億もの星が。
部屋の中を微かに明るくするほどに。
瞬いて。
煌いて。
ひかる。

ああ。
手の届かないものほど。
なんとうつくしく見えることか。

「一年に一度の逢瀬の日だというじゃないか」

お前の声は弾んで。
まるでうたうような抑揚で。

「ボクらの密会にも似合いだよねぇ、そう思わないかいアルヴィスくん」

細い指先が、顎を捕えて上向かせる。
振り払う間もなく、俺はくちづけに呼吸を阻まれた。

「ん……っ、んんんっ」

挨拶程度の、かるいものではない。
口蓋をこじ開けられ。
容赦なく喉の奥まで、舌が入ってくる。
ぴちゃぴちゃと、唾液をわざと鳴らして。
吸って。
舐めて。
噛んで。
また吸う。

「あ。ふぅぅっ……!」

からだが。
どんどん、熱くなる。
こんなの……っ!

恥ずかしいとか、厭だとか。
もう、忘れてしまった。
そのはずなのに。

性感を、こうして煽られるのは。
どうしても。
……抵抗など、お前が喜ぶだけだとわかっていても。
どうしても、好きになれなかった。

我慢しなくちゃ。
我慢、……しなくちゃ。
俺が耐えれば、いつかきっと。
耐え続ければ、いつか。
チェスを倒した誰かが、ここから救い出してくれる。

「褒めて、アルヴィスくん。今日も勝って来たんだよ」

叫びだしそうになるのを。
ぎりぎりで。
……堪えた。

血の匂いが濃い。
この男が、自ら指揮を。
……では。
相手はクロスガードか。

誰だ。
きょう殺されたのは。
……誰だ!

慟哭も。
涙も。
嘆息も。
激昂も。

俺は、封じたはずだった。
そうだ。
この男を。
喜ばせるだけなのだから。

寝台のうえから、星空が見える。
一年に一度しかあえないはずのひと。
……この男なら、支配して征服して。
攫って逃げてしまうのだろう。
天に背いて。

鉄格子の向こうに。
降るような星のあかり。

ああ。
届かないものほどうつくしく。
世界は。
そういう風に、出来ているのだ。


七夕記念、ファンアルSSです〜vv
って!七月七日があと一時間しかない;;

ふだん甘をやっとるカプなので、たまにはちょっと黒っぽく。
けど。
ありがちぃ。ははっ。

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