ギアス

□あのひとの面影をさがしてる、
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「やーん、この格好どうしたのー?」


ルルをつれて、公社の食堂にきたら先輩のミレイさんに捕まった。
どうやら彼女はいまのルルの格好が気に入ったのか、かわいい!ルルちゃんかわいい!としきりなしにいっている。
当のルルといえば、ミレイさんのテンションについていけないのか、なんだかぐるぐるとした顔になっている。


「セシルさんがくれたんです、ルルにって」


こないだ任務の帰りにセシルさんにあったとき、着替えにこれをって彼女から手渡された洋服。
はねた土や返り血、ガンオイルなどで汚れた服を着て帰ってくるだろうルルのために買ってくれたらしい。
やわらかな色のそれは、ルルのきれいな容貌によく映えた。
こんな色も似合うんだ、とぼくは初めてしった。“彼”は、いつも黒ばかり着ていたから。
うつくしさよりも、かわいさを引き出すようなその洋服は最近のぼくのお気に入りだ。



「任務にでると、洋服すぐ汚れちゃうもんねー」
「ぼくは…、どんな服をあげたらいいのかとか、よくわからないので助かります」
「あららー、じゃーこのミレイさんが今度ルルちゃんにプレゼントを贈ろう!」
「だって、よかったね。ルル」



そう問いかけると、なんていったらいいのかわからない、そう言いたげな眸でルルはぼくをみつめてくる。
こういうことはよくある。ルルは知識とか、理解能力はすごくあるけどこういったときの対処法は上手にできないらしい。
義体にもできないことがある、そうおもうととても安心することが、時々ある。それはおかしいことなのだろうか。
ルルの中に“彼”をみつけるたび、安堵をおぼえ、そして落胆する自分もいる。
“彼”はまだ生きている、(でもぼくをおぼえていないし、“彼”は“彼”であって“彼”ではない)
“彼”はまだぼくのそばにいてくれる、(それは雛鳥のすりこみと一緒、そう、条件づけされているから)


「スザク様……」


不安そうな、すがるような声にはっとした。
自分がすこし考え込んでいたことを自覚する。“彼”のことを思うと、周りが見えなくなるのは悪い癖だ。反省しないと。


「あ、ごめんね」
「いえ、申し訳ありません」


それはなんに対して謝っているのだろう。
思考を邪魔したことに?それともうまく対処できないことに?
どちらもルルはわるくない。前者は明らかにぼくの不注意によるものだし、後者はこれから学んでいけばいいことだ。


「こういうときは、『ありがとう』っていえばいいんだよ」
「…ありが、とう?」
「うん、」



ほら、と言って彼をミレイさんの前に押し出す。
彼女は思考にくれていたぼくにも、お礼をうまく言えないルルにも嫌な顔ひとつしない。
にっこりとわらって、ルルをみている。彼女は担当官にはむいてない、そう、おもう。



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