ギアス

□紳士なスノーマン
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07:紳士なスノーマン


ルルーシュを胸ポケットにいれて、僕は彼の部屋へと急いだ。
途中誰かに会わないかひやひやしたが、誰にも会わずにルルーシュの部屋に着くことができた。


「着いたよ、ルルーシュ」
「ん」


胸ポケットの前に手をおいて、そこに降りるようにいうと彼は一生懸命ポケットから這い出てこようとする。
その様子がかわいくて思わずきゅんとする。
必死な様子でルルーシュは這い出たが、片足をポケットにひっかけて最後にはどてっと僕のてのひらに落ちた。
実際の大きさで考えれば、自分と同じ大きさの塀をよじ登ろうとしているわけだし、
ルルーシュには辛いよなあと思いながらおしりをうったルルーシュの頭をなでた。

ちなみに今のルルーシュの格好は、生徒会室にあったティッシュを巻いているものだ。
その見えそうで見えないシースルー具合がちょっと堪らない。
ちっちゃなルルーシュにも欲情する自分がちょっと不謹慎だと思った。



「お前はここで待ってろ」
「え?でも…、」
「いいから、ここで待ってろ!」



僕の目線に彼をあわせると、ルルーシュは僕の鼻をぺしりとたたいた。
全然痛くなくて、むしろその小動物みたいな行動がかわいい。
さあおろせ!と命令するルルーシュに、はいはいと返事をしながら彼をドアの前におろす。
そして、



「スザク!」
「なに?」
「開けろ!!!」



ドアに手をついてしばらくドアノブを見上げたルルーシュは、怒ったように僕を見上げた。
完全に失念していたらしい。
はい、仰せのままにとドアを開けると、ルルーシュは早足でそこに入った。


「終わったら呼ぶから閉めてくれ」
「うん?」


ドアを閉めて、ルルーシュを待つ。
だけどどうしてルルーシュは僕を部屋に入れてくれないんだろう…。
もしかして、見られたくないものでもあるのだろうか。
もしかしたら、前に彼の部屋でみつけた黄緑色の長い髪の毛の持ち主関係だろうか。
そう考えたとたん、胸がムカムカとして苦しくなった。
苦しくて、痛い。

でもそんなことない、そう思って僕はドアノブを引いた。


*




「そんなばかな…」



部屋に入るとC.C.はどこにもいなかった。
そのかわり、ベッドの下に紙が落ちていた。
俺が出て行くときにはそんなものなかった。

それを覗き込むと、こう書かれていた。
『戻し方わすれた。ドンマイ。』



「なにが『ドンマイ』だー!!!!!!」


思わず紙をくしゃくしゃにする。
だけど今の自分では一角だけをくしゃくしゃにするので精一杯で、更に恨めしくなる。
というかあの女はどこにいったんだ。
言ってやりたい事が山ほどあると言うのに!
紙をその場に戻すと、ぴらりとフローリングを滑った。
そして裏返る。



「ん?」



そこにはもう一言書かれていた。
何か手がかりでも、と思いその場に駆け寄る。
しかし、


『グラタンピザ食べたい』



その文字に、ぴしりと固まる。
そしてふつふつと怒りがこみ上げてくる。



「あの魔女…!!!!」
「魔女がどうかしたの?」



その声に、違う意味で固まった。
まだいいといっていないのにスザクがなぜかドアを開けている。
待て、もできないのかこの馬鹿が!といってやりたい気分だが、
それではただの八つ当たりであまりにスザクが不憫なのでやめておく。
とにかく俺はC.C.からの置手紙を、あわててベッドの下へとすべりこませた。



「ルルーシュ?」
「な、なんでもない!というかいいというまでドアを開けるなと!」
「うん…、だけどなんか不安で…」



そう言いながら寂しそうな顔をするスザクをみて、俺は不覚にもときめいてしまった。
だけどこの体では包み込むことも、大丈夫だとなでてやることもできない。
自分の惨めさに腹がたった。



「それより、直りそう?」
「え……、いや、駄目みたいだ。
しばらくはこのままかもしれない…」
「そっか、どうしようね…」



そうだ実際問題どうしたらいいのだ。
ゼロとしての活動も、学校だってある。
なによりいきなりこうなってしまった俺をどうやってナナリーに説明したらいい!
ああ、俺はどうしたらいい。
頭をかかえてしゃがみこむとスザクが俺を包み込んで目線まであげた。
翡翠色の、俺が好きな色が目の前にあった。



「大丈夫、僕がそばにいるよ」
「スザク…」


そのやさしい笑顔に俺は少女漫画のヒロイン(シャーリーから無理やり読まされた)みたいに胸を高鳴らせた。
はたからみたら実に寒々しい、というか異質の光景だろう。
だけれど俺は普段よりも心が弱くなっていたので、そのやさしい、かわらない笑顔がとてもまぶしくみえた。



「とりあえず僕の部屋においでよ。
ナナリーには君が風邪をひいて、ナナリーにうつしたくないから
僕の部屋にでも泊まってるとでも言えばいいよ」
「…ああ」
「大丈夫、僕にまかせて」



そう言ってスザクはまた俺を胸ポケットへ入るように促した。
俺はおとなしくそこへと入る。
制服ごしにスザクの体温を感じて、俺はゆっくりと目を閉じた。


To be continued.



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