ギアス

□バブルフラワー
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08:バブルフラワー


「ナナリー、話しがあるんだ」
「あら、スザクさんどうかしました?」


学校からかえってきたナナリーを捕まえて、スザクがしゃべりだした。
俺はそれをスザクのポケットから顔をだしてそれをみまもった。
ナナリーは目が見えないから、俺のことも見えない。
あの子の手を握ってやれないことが、ひどく俺とナナリーの距離を開けてしまったような気がして
思わず涙ぐんだ。



「あのね、ルルーシュが風邪をひいちゃったんだ」
「まあ!!大丈夫なのですか!?お兄様は!!」
「それがちょっと酷いみたいで、今は僕の部屋にいるんだ」
「お兄様…、」



心配そうに膝の上の手をぎゅっと握るナナリーをみて、俺はもう号泣だ。
俺はここにいる!大丈夫だ、心配しなくていいんだよと抱きしめてあげたい。



「君にうつしちゃいけないって、だから直るまで僕の部屋にいる事になったんだ」
「そう、なんですか……」
「心配?」
「はい……お兄様に何かがあったら私…」



本当にやさしい子だ、ナナリーは。
俺はこんないい妹をもって幸せだ!



「でも、スザクさん。あの…スザクさんのお部屋って…」
「あー、軍が借りてるやつだけどね。
でも大丈夫、アッシュフォード大学の寮を使わせてもらってるし、
僕の所属するところは部屋の中まで気にしたりしないから。
抜き打ち検査とかもないしね」



そうスザクが告げると、ナナリーはほっとしたようにこわばった顔をすこしだけ、
ほころばせた。
俺の体や、事情まで心配してくれるなんて!
俺はこんな(以下省略)



「だからしばらくは一人で大丈夫かな…?」
「はい、沙世子さんも居て下さいますし、大丈夫です」
「そっか、僕もできるだけ顔をだすようにするからさ」
「はい、ありがとうございます。
でも、スザクさんはお兄様のそばにいてください」
「ナナリー…」
「私が病気のとき、お兄様はずっと私のそばにいて手を握っていてくださるんです。
そうすると、とっても安心して寂しくないんです。
すぐに病気もよくなる気がするんです。
だからスザクさんも、お兄様のそばにいていただいても、よろしいですか…?」





俺の涙腺は崩壊した。
スザクのポケットには俺の涙のしみができているだろう。



「な、ナナリー!」
「え?」



思わず叫ぶとスザクがすばやく俺の頭をポケットへと押し込んだ。
なにをするんだと指を押しのけようとするができない。
頭のちょうどつむじあたりをぐりぐりと押される。
やめろ!これより縮んだらどうしてくれる!



「今お兄様の声が……」
「き、気のせいじゃないかな…」
「そうですか…」



気のせいじゃない!
俺はここにいるよ!
悪い魔女にこうされてしまったんだ、だけど絶対に元に戻ってお前を迎えにいく!
俺は呪いなんかに負けはしない!
そう決心して俺はポケットの中で大粒の涙を流した。




*



「ここが僕の部屋だよ」



ナナリーと涙の別れをした後、スザクの部屋へとやってきた。
実はスザクの部屋に入るのは初めてだったりする。
それがこんな状況だなんて、とても悔しいが。


「中々、片付いてるじゃないか…」
「まあね、物があんまりないし…」



初めて入るスザクの部屋は、俺が言えたことじゃないがすこし殺風景だった。
前に入ったリヴァルの部屋はもっとごちゃごちゃしていて、
汚らしかったのに。
以外にきれいにしている事に関心しつつ、俺はスザクにベッドへと下ろしてもらった。
安っぽいシーツの上にたつと、ふわりとスザクの香りがした。
ここでスザクが寝ているんだと思うと、無性に嬉しくなった。
決して顔には出さないが。



「じゃあルルーシュ、お風呂は入ろうか」
「へ?」
「だってさっきまでべとべとだったし」



俺はあの時の事を思い出して、俺は思わず枕の下へと逃げ込んだ。
消したい記憶だ、人生の恥だ汚点だ!
しかもそれをスザクに見られるなんて!!
生きて行けない…っ!



「この部屋シャワーしかついてなくて…、
シャワーだとルルーシュ流されちゃうかもしれないしね」
「こわい事を言うな!」
「いいから出ておいでよ」



絶対にいやだと思っていたのに、枕をはぎとられて俺は無理やり出てこさせられる破目になった。
体の大きさとはここまで違うと、何も抵抗できやしない!


「はい」
「……スザク、これ…」
「うん、マグカップ」
「お前、もしかしてこれが…」
「うん、お風呂だよ」



やっぱりか!
カップの中にはお湯が入っていて、聞いたらポットから出して水でぬるくしたらしい。
だから入って、と体を持ち上げようとするスザクが非常にむかついた。


「離せ!これは飲み物を入れるものであってつかるものではない!」
「だって洗面器だと広いからルルーシュ溺れちゃいそう」
「溺れるか馬鹿!」
「えー、ルルーシュだよ?」



そんなに俺はお前の中で情けない設定なのか!
なんだそのすこしかわいそうなものをみる目は!
お前、俺がこうなったから溺れるんじゃなくて実際の大きさの俺でも、
泳げないとか思ってるだろう!
泳げるからな!一応、最低限のちょっと下ぐらいまでは。



「じゃあ体は洗面器で洗おう?」
「だから、いやだって!」
「大丈夫、お湯ははってないよ」
「そういう問題じゃない!」



そうぐずっている間にスザクは俺を洗面器へと置いた。
そして指にマグカップのお湯をつけると俺の体へと滴らせた。
するとまとっていたティッシュが濡れて、溶けていく。


「こ、こら!!」
「だってルルーシュが暴れるから」
「だからって、やめ…っ」


みるみると俺の体を覆っていたティッシュがなくなっていく。
危険薬をたらした布のようにじわじわと穴があいていく。
俺はおもわず手で体を覆い隠した。
だけどそんなのは意味がなくて、スザクはどんどん俺の体にあたたかなお湯をかけていく。
そうして俺は再び素っ裸、…いや。


「ほら、溶けたでしょ?」



ところどころにティッシュが溶けて残りながらも、大部分は溶けて素肌が見えてしまっているという、
なんとも頼りない格好になってしまったのだ。


To be continued.




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