ギアス

□私が空の色より綺麗だったなら
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ルルーシュが死んで、十年以上がたった。
彼の作り変えた世界は涙が出るくらいきれいな色を発し続けて、
何事もなかったかのように回り続けている。
やさしいやさしい、彼があいしたせかい。




彼がかけた願いという名のギアスはとうの昔に消えていた。
夢の中に現れたルルーシュがそっと僕からそれを攫っていった。

ルルーシュが死んでから何度もみた彼の夢。
夢の中の彼は何もしゃべらず、ただそっと僕に背を預けるだけだった。
僕は何かしゃべりたいのにいつも言葉にできなくて、気づいたら夢が覚めている事の繰り返しだった。
そしてある日、僕はやっとのことで彼の手を握り締めた。
細い指がびくりと跳ねて、驚いたようにルルーシュが振り返った。
そしてゆっくりと握り返される。
泣きそうな笑顔をみたらたまらなくて僕は今まで言えなかったことを全部吐き出した。
うんうん、と頷いていた彼に最後に生きる喜びをみつけたんだよ、と笑いかけると
ルルーシュは眸をまんまるにしてそして笑った。
彼は立ち上がって、僕の瞼にキスをした。


そして目が覚めたとき、僕にかかっていたギアスが消えたことを知ったのだ。
それからというもの、夢の中でルルーシュには会わなくなった。
今考えれば僕はとても不安定でルルーシュも心配で心配で逢いに来てしまっていたのだろう。
彼はとても世話焼きだから。
だからもう、大丈夫だといわれたのだ。
それはすこし寂しく、だけど改めてこのせかいをあいしてよかったとおもったのだ。


そしてこのせかいに今日、別れを告げる日が来た。



道路に飛び出した子どもをかばって、僕は車に轢かれた。
僕にとってのかみさまはルルーシュだ。
そのルルーシュが創った世界にうまれた子ども。
かみさまの、こども。
とびだした瞬間、直感的に間に合っても衝突を避けることはできないとわかった。
だけど腕に抱いた幼い命だけは守りたかった。


体が燃えるように暑いのに、指先は驚くほどにかじかんでいる。
たくさんの悲鳴が聞こえ、駆け寄る人々の気配を感じる。
先ほどまで隣にいたナナリーの裂けるような声が聞こえる。
だけどそれも、ぼやがかかったようにだんだんと聞こえなくなった。


瞼をゆっくりと開けて、仮面ごしに周囲を眺める。
視覚はまだあるらしい。
僕にすがりながら泣き叫ぶナナリーがいる。
ごめんね、そう思いながら視線をずらすと僕が助けた男の子が母親に抱きしめられているのがみえた。
よかった、本当によかった。
おもくておもくて仕方がなくなってきた瞼を閉じようと思ったとき、
たくさんの人の群れの中に、輝く影があった。



ルルーシュ、



声にならなかった。
久しぶりの彼がそこにいた。
たくさんの人にぶつかることなく、彼はまっすぐに歩いてくる。
世界はとまり、ルルーシュだけが動いて見えた。

彼はゆっくりと僕へと近づいて、しゃがみこんだ。
仮面をかぶっているはずなのに、髪の毛をなでられる懐かしい感触がした。




「るるーしゅ、」



手をのばすと彼が僕の手をとってくれた。
白い、僕の涙をぬぐおうと仮面をなでた指がそっと僕へと触れる。
あのときのように、僕は仮面の下で涙をながした。
そして今度は確かに、涙をぬぐわれる感触がしたんだ。


「いこう、スザク」


そして僕は重い仮面も冷たいスーツも脱ぎ捨てて、彼の手を握り返した。
もう絶対に、離さないように。
あいしてるだからね、もう離れたくないんだ、何度もくりかえして僕らは歩んでいく。
彼と見た空はこころが壊れるほどにきれいだった。




「ゼロ…さん?」



ことりと地面へと落ちた腕を、ナナリーはそっと握った。
体温の抜けきった、抜け殻のような冷たさ。
ああ、とうとう兄の元へといってしまったのだ。
こんな仮面も正義を着飾った衣装も、全部全部置いていって。
ゼロではなく『枢木スザク』として兄のもとへと帰ることを、この人は望んだのだ。




私がの色より綺麗だったなら
(僕らはきっと出会うことはなかったはず)


Happy Birthday lelouch!
thank you for geass.
I love suzalulu…!



>>end.


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