ギアス

□真夜中のラブソング
1ページ/2ページ


真夜中のラブソング


携帯の短縮ボタン1を押せば、無機質な機械の音がきこえだす。
最近の若い子たちは(自分も彼女も、十分若い)色々な音楽をコールの間にながしたりするらしいけど、
彼女がそんなことをするはずがなく、もちろんぼくだってやってない。
初めて携帯を持ったときからかわらない、この音。
昔この音が流れるたび、正確には彼女がでるまでの間この音を聞いているとき、
とてもどきどきしていたのを今でもおぼえている。
5コールめでその音がとぎれた。



『…はい』
「あ、ルルーシュ?ぼくだよ」
『…おつかれ、仕事、今日ははやいんだな』
「うん、今日は頑張ったからロイドさんがもう帰っていいって」
『そうか、よかったな』


電話先で、彼女が笑ったのがわかった。
その笑顔もここ数日みていないな、最近はずっと残業続きだった。
仕事場に泊まった日だって何日もある。
笑顔どころか、顔すらみれていなかった状況だった。
それでも毎日数分、彼女が寝てしまう前に一回だけ電話をした。
もっと、もっと。欲張りなじぶんがどんどんあふれてきて、蓋なんてとっくに壊れてしまっていた。
だから、きみにいうよ。


「ね、ルルーシュ」
『うん?』
「…結婚しよ」


びっくりしたように、ルルーシュが電話先で息をのんだのがわかった。
電話先の彼女の表情も感情も、わかるようになってしまった。
昔は、なにをおもってるのか、どんな顔をしているのか、そればっかりぐるぐる考えていて、
うまく会話なんてできなかったのにね。


『……ふつう、』


ちょっとの間の沈黙のあと、ルルーシュはすこし不満そうな声で言った。
きっと唇をすこしとがらせながら。そんな彼女を想像すると、微笑がこぼれる。
付き合い始めた頃からかわらない、きみが拗ねたときの顔。






.

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ