drr小説

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目を覚ますと白い天井が広がっていた。
静雄の暮らす、築云十年のボロアパートにはない白さだ。
しかし清潔か、そうではないかと聞かれると気分的に後者だ。
ラブホの天井なんてきれいなわけない。


ベッドサイドをまさぐり煙草をみつける。
それに火をつけると薄暗闇の中の全貌がみえてくる。
隣の白い肩に目をやる。
柔らかそうなそれは女性特有のものだ。


あいつとは、臨也とは何もかもが違う。


小さく身じろいだその人物の顔をみても、
その人がどんな人なのか、まったく静雄は思い出せなかった。






静雄が臨也以外の人とセックスするようになったのは特にきっかけがあったわけでもなかった。
気がついたら隣に知らない女が寝ていた。
それが何度もあった。
別に酔った勢いで記憶もなくして、なんて都合のいいことが起こっているわけではない。
静雄は酔ってはいても記憶も理性もしっかりしているし、記憶もなくならない。
女がどうやって誘ってきて、自分がどうやって女を抱いたのかも覚えている。
だけどその女がどんな人で、どんな声で、そしてどんな顔なのかも静雄は覚えられない。
覚える気もないが。



病気だよ、と少し前にいわれたことがある。
小学校の同級生で、高校で再会した腐れ縁に。



『浮気はね、雄の遺伝子で考えると本能って便利な言葉で解決できる。
だけどね、それは自然界での話だよ。
人間で、愛する人がいるのに、なのに無意識にしてしまうのは…病気だよ』



いつになく真剣な面持ちで話した新羅には理解しがたい行動なのだろう。
セルティだけを愛し、セルティだけを求めてきたこいつには。
静雄は自分の行動を正当化するつもりはない。
テレビで芸能人が『浮気は仕方がないんだって!』と言う度に、死んでしまえ!とも思う。
なのに、どうしてだろうなあ。




泣き出しそうなすみれを抱いて、
(あいしてるんだけどな、)


>>2


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