drr小説

□青空メガネ
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(来神)



「………」
「あ、おはよーシズちゃん」



朝教室に入ると臨也がいつもの憎たらしい感じで声をかけてきた。
いつもと同じなはずなのに何かが違うと思ってじろりと下から上までながめ、違和感を探す。
すると臨也がにやりと笑って、鼻筋に指をやっておしあげる動作をした。
それを目で追うと、ああと納得がいった。


赤い瞳が今日はレンズ越しに俺をみていた。




「なんでまたメガネ…」
「ちょっと知り合いからたくさんもらってさ。
だけど僕は自分のやつもってるし」



セルティに選んでもらったやつだから変えるつもりはないよ!と聞いてもいないのに話しはじめた新羅は無視するとして、静雄はちらりと臨也に目をやった。
少しだけ上機嫌にメガネを選んでいる。
門田はあまり興味がないのかかけようとはせず、臨也が選ぶのをみているだけだった。





「度は入ってないし、静雄も好きなのもっていっていいよ」
「……ああ、」



いくつものメガネが机の上に並んでいる。
黒縁のもの、赤や色んな色のもの、ノーフレームのもの、サングラスも
少しかわった…つーか誰がかけるんだというものもある。
臨也は今は黒縁メガネをかけていて、それが気に入ったのか、
妙にかわいい鏡(女子生徒に借りたのだろう)を覗き込んでいる。
その横顔がいつもと違って静雄はどきりと胸が暴れるのを感じた。




「ねードタチンこれ似合う?」
「おー似合うな」
「僕は臨也にはもっと性格が悪くみえるこれとか…」
「新羅しね」



きゃいきゃいとまるで女子高生のように騒ぐ男たちを見ているのは少しだけ寒いものがある。
はあ、と思いため息をはくと目の前の視界に色がついた。
薄いブルーごしに少しびっくりしたような顔をした臨也がいた。
しかしすぐにいつもの笑顔にかわる。


「テメエ」
「あははは!シズちゃんすっごく似合うよ!超ほめてるからね!
ホストっぽいというかなんというか!これは誰も近寄ってこないね!」
「褒めてねえだろこのノミ蟲!!!」



おもいっきりイスを投げつけるとそれを臨也はひらりとかわした。
教室内の人間は慣れた様子で、自分の荷物と共に非難する。
臨也は教室内をでると挑発するように静雄をみた。




「案外かわいいよ、シズちゃん」
「…っ、ノミ蟲ぃぃぃぃ!!!」




顔を真っ赤にした静雄が教室のドアをもぎ取り、それを抱えて臨也へと投げつける。
臨也はそれをかわしながら走り抜ける。
教師はもはや止めようとはしない。誰だって命は惜しいのだから。




屋上へのドアを静雄があけると、臨也がくるりと振り向いたところだった。
メガネをかけたままの臨也に、また心臓がうるさくさるのを静雄は感じた。



「ノミ蟲、それはずせ」
「え、なに?」
「…っ、メガネだよメガネ!!」



ああといいながら臨也はメガネに手をかけた。
しかしにっこりと笑いながら静雄へと近づいてくる。



「いつもと違うでしょ、ちょっとはどきどきするー?」



きゅっとメガネを押し上げる動作が妙に色っぽくて静雄はのどを鳴らした。
じとりと視線をはずさない静雄に臨也も訝しげに顔をのぞきこんでくる。
レンズの隙間から上目遣いに覗き込んでくるその大きな瞳に、正直、やられた。



「ああ、」
「え……」
「すっげー似合ってる」
「っ!」




ぼっと顔を真っ赤にした臨也があわててメガネをとろうとしたのを見逃さず、その手を押さえる。
そのまま腰を抱いて口付けると、つけたままだった静雄のサングラスと臨也のメガネがかちゃりと音をたてた。



「ん…っ、」
「…これ、邪魔だな」



唇を離すと、静雄はサングラスをはずした。
これをつけたままじゃ、臨也の顔がよくみえない。
瞬きの合間の表情だって、見逃せないというのに。
もう一度軽く口付けると臨也がメガネをはずそうと手をのばした。
その手も押さえ込んで深く口付けると、臨也は驚いたように目を瞬かせた。


「…んぅ…、シズ…ちゃ、」
「お前、もうメガネかけんな」
「…なんで」
「俺以外のやつにみせんな」



顎をとらえて不満そうにつきだした唇をついばむと、またまた顔が赤くなる。
それを隠そうとぎゅっと抱きついてきたので、まあるい頭をなでた。




「…ずるい」
「あ?」
「俺だって超ほめてるっていったし」
「ああ…」



あれは本当にほめてたのか。
なんともわかりづらいというか、なんというか。
ありがとうの気持もこめた髪をなでると、臨也は気持ちよさそうに目を細めた。





青空メガネ
(サングラスにときめいたのはナイショだよ)


>>End.

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