drr小説

□くちびるに花びら
1ページ/1ページ





だからね、俺は別にシズちゃん、君の事が嫌いなわけじゃないんだ。
まあ、今まで色々あったけど、一応、…こいびと、みたいな感じ、
…ごめん、『みたい』じゃなくて恋人だよね、怒らないで。
うん、だからさあ、別にセックスのひとつやふたつ、別に問題ないわけだよ。
でもね、だめなんだよ。
あ、俺の名誉のために言うけど、病気とかじゃないから。
キスはいいよ、すきだもん。
君が地味に不満に思うのは最後までしないことだよね?
キスもして、互いに触って、ヌいたりもして、だけど俺が挿入させないのが問題なんだよね。
…ちがうよ、ちがう、嫌いだからじゃないんだって!
ほんとだよ、



それも違う。
シズちゃんが童貞だからとか下手そうとかそんなの関係ない。
…いたたたたたた!頭トマトみたいにつぶれちゃうって!
もー、いったいなあ。


うん、ありがと。
君が俺とできなくてもいいって、それでもすきだって、思ってくれてるのは、
正直、すっごくうれしいよ。
馬鹿みたいだよね、だけどね、俺には重要なんだよ。




シズちゃんは俺にいれたい?いれられたい?
…うん、本気で悩まなくていいから。
俺はね、自分的には俺が挿入されるんだってずっと思ってた。
……ちょっとそこ聞き流して!
ずっと、っていったけど別に!にやにやしないでよ!きもい!



…俺はね、シズちゃん。
シズちゃんに抱かれたらそれはもう、うれしいんだ。
だけどね、シズちゃんは俺を抱いても何もかわらないよ。
気持ち的なことをいってるわけじゃない。
肉体的、みたいな?
ごめんあんまうまく伝えられない。
けどね、シズちゃんは俺を抱いても先に進める。
だってかわらないもの。
女を抱いても、男を抱いても、それでもシズちゃんは抱く側だもの。
だからシズちゃんはきっと俺がいなくなっても先にすすめる。


けどね、俺はきっと違う。
シズちゃんに抱かれたら、俺はもうそこから動けなくなる。
だってもうかわっちゃった。
俺じゃなくなっちゃったんだ。
今までの折原臨也じゃなくなっちゃう。
俺の身体からシズちゃんは消えなくて、
俺はきっと、シズちゃんからとらわれて動けなくなる。
シズちゃんがいなくなったら俺はもう元に戻れない。
前にも進めない。
だってもう違うんだもん。






「…言いたいのはそれだけか」





見下ろした身体はびくんと震えて、こくりと頷いた。
何度目かのこういった雰囲気になって、同じ数だけの拒否をもらって、
そして臨也はぽつぽつと語り始めた。
こいつの話は長くてわかりづらい。
絶大なる影響力をもつこいつの弁舌も俺の前では塵みたいなもんだ。
風にふかれてどっかにいっちまう。



「だから俺に抱かれたくないと、」
「あ、抱きたいわけじゃなから」
「聞いてねえよ。
…俺は別にお前とセックスがしたくて付き合ったわけじゃねえから、
できなくても別にいい。
でもお前が語る…、変わる変わらないっつーのはどうも腑に落ちねえ」




きょとんと長い睫毛を瞬かせた臨也は、どうして、と唇を尖らせた。
つきだされたとこを舐めとるように口付けると、おとなしくそれを受け入れた。
小さく零れ落ちる声が耳をくすぐる。
唇を開放するとちゅっと甘い音が響く。
ふわりと笑うこいつが好きだ。
だけど、


「お前は俺と終わるつもりで今いるのか」
「え、」



俺が腑に落ちない理由はこれだ。
なんだ、変わるとか変わらねえとか。
要するに別れる別れないの問題だろ?
その後の問題だろ?




「絶対なんて言えねえけど、でも俺はお前と終わる恋なんてしたつもりはない」
「っ!」
「変わらねえよ、俺の気持ちは」



お前は、とは言えなかった。
首にまわされた腕がぎゅっと力をこめられ、さらさらの黒髪が頬をくすぐった。
抱きつくように飛び込んできた身体をそっとベッドへと下ろすと臨也は真っ赤になった顔で不服そうな顔をした。



「あー、シズちゃんに諭される日がくるなんて…」
「負けを認めたか?」
「まあね、ね、シズちゃん、」




この先に何もなくても、俺と一緒にいてくれる?
そう臨也は笑った。
その笑みは静かに震えていて、安心させるために額へとキスをおとす。
目と目を合わせると、誘うように瞳を閉じられる。
唇をおとして、段々と深くなる口付けに酔うように二人ひとつになる。




「シズちゃんを俺のものにしたいな」



そういって挑戦的に扇情的に笑ったその笑顔に、
俺は挑むようにその白い首筋に噛み付いた。




くちびるに花びら
(ほんのりと色づく愛の証)

>>end.
ただのイチャっぷるでしかなくなった。


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ