幻想小説 U

□56。
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目が覚めれば、あたしは宿屋のベッドにいた。
のそのそと起き上がり、痛む頭に顔をしかめながら、煙草に火を点け窓を開ける。

目の前には、近くて遠い朱い月。

煙を吐き出し、それを滲ませてやった。


「おはよう、ラジア。」


背後の声に振り向けば、金髪碧瞳の腹黒魔術師がへらりと笑ってそこにいた。


「プライバシーの侵害だから。」


あんたもアレックスも。

そう思ったが、そこまでは言わなかった。
言ってやりたいのは山々だが、とりあえず後がこわい。
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