幻想小説 U
□37。
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うやむやの内に数週間続いた氷の国滞在も、漸くマリーは、出発する気になったらしい。
あれから。
何度かイメルダの奇襲があった。
あたしは何故、気付かなかったのだろうか。
多分。
鈍いからなんだと思う。
「ラジアー!」
ばたーん!
勢い良く開けられたドアの向こうには、相変わらずな叫び声を上げたイメルダが立っていた。
明日にはこの国を立つあたし達は、最後の荷物確認を終え、部屋で飲んでいた所であった。
騒々しい奴だな。
あたしが密かについた溜め息など、イメルダは気付きもしないだろうが。