幻想小説 U

□43。
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背中にリザを感じながら、あたしは煙草の煙を見詰めた。

"クラチカ"

彼のことをリザに言わせたのは、多分、あたしの所為だと思う。


「…まだ、忘れられないのよ。」


応えた声は、何故か遠く聞こえた。


「三百年以上、前のことなのに。」


呟いて

言葉にして

実感した。

もう、三百年以上前のことなのだ。
そんなに経ったのか。
そんなに経ったのに、あたしは、まだ。


「…まだ。」


愛しているとでも?

違う。

動けないでいるだけ。
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