幻想小説 U

□33。
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そんなに口が寂しいのなら。


「…俺とすればいいのに。」


沢山沢山、その口唇に口付けを降らせてあげるのに。


「…何か言った?」


聞こえなかった様で、ラジアちゃんはきょとんと首を捻った。


「…ううん。」


椅子に腰掛けるラジアちゃんを後ろから抱き締めた。

窓辺に座って、また、月を眺めていたんだ。
煙草の煙に、想いを馳せていたんだ。

何に?

…誰、に?

聞かなくても、解る。

"クラチカ"。

言わないけれど。
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