幻想小説 U
□41。
3ページ/5ページ
よくよく考えれば、悲鳴の一つも上げてよかろうものだが。
まあ、今更ではある。
「…何。」
空いた手で銀糸を梳けば、指間からするするとそれは落ちていく。
リザは、あたしより随分と大きくなった。
身長なんてとっくに越えてしまったし、体も逞しくなった。
なのに。
「…甘えたな所は、変わらないのな。」
「…ラジアちゃんにだけだよ。」
屈めていた背を伸ばし、あたしの頭上から蒼が見詰めた。
優しく細められた蒼と、視線がぶつかる。
あたしは今、どんな顔をしているだろうか。
冷静だけれど。
今は、まだ冷静でいられるけれど。
「…もう一度、抱き締めてもいい?」
あたしの応えを聞く前に、口付けを落としてから柔く抱き締められた。
聞いた意味が、まるでない。