幻想小説 U
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薔薇の匂いが、鼻につく。
煙草の匂いと混じり合う。
思わず、顔をしかめた。
「…ラジアちゃん。」
「…何。」
振り向きはしなかった。
今、リザはどんな顔をしているだろう。
「…ごめんなさい。」
リザの抱き締める腕に、力がこもる。
後悔してるんだろう。
聞いてしまったことに。
煙が揺らめく。
ゆらゆらゆらゆら。
消えない思い。
消えない罪。
それでも、三百年はあっという間で。
「…知りたい?
クラチカのこと。」
あたしの呟きに、リザが僅かに動いた気がした。