*sketch*
□ウソツキ。
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「ゆみこ、今日何の日か知ってる?」
「ふっふっふ、もちろん」
「え、知ってたんだー。意外」
「えー、有名じゃないですか」
「そう?私は調べたから知ったくらいだけど」
「すんごいメジャーな日だと思う・・・」
「そうなんだ。今日が、日頃の不義理を詫びる日だなんて
誰も知らないと思ってたけど、メジャーだとは」
「え、何て」
「だから、日頃の不義理を詫びる日」
「今日?」
「うん」
知らんかったー。ていうか勘違いやった。
てっきりエイプリルフールのことかと思ってたけど・・・
チカさんて、ホント何でも知ってるんやな。
「え、と。日頃の不義理・・・のなんちゃらかんちゃらですけど」
「日頃の不義理を詫びる日。本当に知ってる?」
「いや〜、てっきりエイプリルフー・・」
「ゆみこ」
「は、はい」
「まずは私から謝らせてね」
「え、何を」
「決まってるでしょ、日頃の不義理をだよ」
「それって」
「もう無理って言ってるのに何度も抱いたりとか、ここじゃダメって言ってるのに、あえてそこでキスしたりとか、強引に迫ったりして結局押し切るとか、ゆみこが嫌がることを楽しんでしたりとか・・・」
「わー!も、もういいですっ」
「え、でもまだまだあるけど」
「十分です」
「じゃあ、今日謝ったから、これからも大目に見てね」
「え」
「今謝ったこと、反省はしても直せないから」
「だ、だめです!」
「はいはい」
「えっ、ちょっと、どこ行くん・・・」
チカさんが笑いながら、手を引っ張って連れて行かれた先で・・・
もう思い出したくないような、恥ずかしいことばかり。
だめって言ったのに。大目に見るなんて言ってないのに。
謝ったこと・・・全部してくるなんてズルイ。
「ゆ〜みこ♪」
「・・・・・」
「怒ってるの?」
「・・・チカさんのウソツキ」
「何で?ちゃんと前置きしたよ」
「っ、だめって言ったやん!」
「日頃の不義理を詫びたのに?」
「謝ってもだめ・・・」
「じゃあ、どっちにしろダメだってことか」
「チカさん?」
「今日さ。あ、もう後数分で終わるけど。
日頃の不義理を詫びる日、なんてないんだよね」
「え」
「今日はエイプリルフールだからね〜。
害のない嘘をつかないと、と思って。
で、今までの不義理を謝れば、快く事が運ぶかなって思いついたわけ」
まぁ、変わりなかったけどねーって笑いながら言ってくる。
つまり・・・私はチカさんに騙されて、他の誰も騙せんかったってことで・・・。
「ゆみこ、コロっと騙されるんだもん。面白くて」
「なっ・・・」
「さーて。更に不義理なことしよっかな」
「・・・っ!」
両腕を押さえられたまま、唇を塞がれる。
何度か啄ばまれた後、にっこりと微笑まれて。
チカさんの・・・チカさんの・・・
「チカさんの・・・ウソツキーっ!!」
チカさんと、当分口を聞かなかったのは言うまでもない。
fin.
→あとがき。