*Le soleil*

□フレパA
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「でもテレビって凄いよね。綺麗にイイとこどり出来るし」

「そうですね〜、失敗しても無かったことに出来ますもん」

「まぁ…肝心な所カットしてなかったりもするけど」

「そんなとこ、ありましたっけ」

「個人的には、ゆみこの謝ってる顔と声かな」

「何でですかー。別、普通やん」

「…あれを素でやってるから怖い」



また懲りずに2人でフレンドパークを見て、ふと撮影中を思い出した。
生の舞台とは違う怖さが、テレビにはあると思う。
全国ネットほど、ハラハラするものはない。



『えーっと…アイラインブラシ!』



テレビの中のゆみこが、わたわたしながら必死に答えてる。


『え、…あ、眉ブラシ!』


「うわー、顔が必死すぎる」



映ってる自分にツッコミながら、隣で笑ってるゆみこ。
テレビの中のゆみこは、無事に正解して隣合ってる私とキムとハイタッチしている。
ここのシーンは何度見ても、思わずホッとする。
本当に良かった、カットされてて。


ゆみこが最初に問題を出されたのが、ブラシに関してだった。
オンエアでは、スラスラと答えてるように見える。
ちょっと目は泳ぎ気味だったけど。


本番は違った。


テレビに映った倍以上にわたわたして、焦り過ぎて同じ答えを何度も言ったり。
そんなこんなしてたら、ブーッと不正解の音が鳴った。



「え、え、…眉ブラシ!…えーっ!…ごめんなさい〜っ…」


その時のゆみこは、出来たら私で隠したかった。
しゃがみこんで謝りっぱなし。目は少し潤んでいる。
声はもちろん高くて、眉毛は下がったまま。本当に豆柴に見えてくる…。
頭に犬耳がついてたら、間違いなく垂れてたと思う。


「…どうしよー…すみません…」


ドンマイと励ましていたら、関口さんからストップの声が。


「すみません。さっき何と答えたか、もう一度教えて下さい」


ゆみこは少しオドオドしながら、ブラシの名前を挙げていく。
スタッフの人が答えを確認しているらしく、少しの間があって妙な緊張感があった。


「すみません、正解です!」


スタッフの人の声と共に、会場が歓声を上げた。
ゆみこもすっごく嬉しそうにバンザイしていた。
もちろん私も嬉しかったけど…内心は少し複雑。
満面の笑顔。子どもみたいに無邪気に笑って、はしゃいで。



「次から、その声と笑顔は禁止の方向で」

「無理です…だって、これは元々やもん。」

「知ってる。だから隠して」

「えーっ」

「出来るよね?女優だから」

「女優て…そんなにおかしいですか?この声と笑顔」

「ううん、可愛い」

「…そんな冗談はいらんので」

「可愛いから見せたくないの。いい加減、こっちの身にもなって」

「っ…!そんなん、チカさんやってこのシーンの笑顔とか可愛すぎるもん!テルに抱きしめられた時なんか…」



隣でわーわー言ってるけど、とにかく笑顔とあの声はどうにかしないと。
全国ネットで敵を増やさないようにしなきゃ。
ゆみこは言っても分かってくれないし。



チカさんの悩みは続く…。



fin.→あとがき
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