*Le soleil*
□hakana
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不器用だから。
だからこそ、伝えたかった。
「となみー、こないだ手紙ありがとう」
「いいえ、ちょっと照れくさかったんですけど」
「宝塚だけでも嬉しかったのに、東京も書いてくれるなんて」
「よかったー、喜んでもらえて」
「私も、手紙書こうかと思ったんだけどね」
「えぇっ!いいです、ミズさんには本当に手紙には書ききれないほど感謝しているので、その手を煩わせるなんて、そんなの」
「となみ、落ち着いて」
だ、だって・・・
トップさんに負担をかけるようなこと、させたくないから。
ミズさんは苦笑というか、半笑いみたいな顔で見てくる。
「あの手紙、2枚とも大切にする」
「そ、そんな・・・」
「すっごく大事にするから」
「・・・ありがとうございます」
わー・・・ちょっとウルっときた。
「もうすぐ、だね」
「はい」
「きっと、その日が来てもお互いに実感ないかもしれないけど」
「寂しがってくれますか?」
「・・・まぁ、それなりに?」
「それなりって、ひどーい!」
楽しそうに笑ってる姿を、焼き付ける。
これから先は、もうミズさんの隣に私はいないんだ。
こんな風に、楽しく話すことも・・・
考え出したら寂しくなるだけだけど。
「となみが、いてくれてよかった」
「・・・・・」
「となみが、相手役さんでよかった」
「ミ・・・ズさん」
「いつも笑顔で側にいてくれて、ありがとう」
「きっと・・・当日は感極まって言えなくなりそうだから、今言っちゃった」
「っ・・・ふ、ふいうちは・・・ずるいです〜・・・」
ミズさんが、好きでした。
手紙には書けなかったけど、ずっとずっと。
叶わなくても、好きでした。
いつもどこか隣にいることが不安で、
あなたに相応しい相手役になりたいと
これぞ宝塚の娘役と呼べる人になりたいと
ただ、それだけを必死に求めて突き進んできたけれど。
そうなれたのかどうかは、分からなくても。
今の言葉がある限り、私は、本当に幸せ。
優しく涙を拭ってくれる手が、温かい。
きっと、ここを去ってからも、私はあなたが好きなんだろう。
「・・・抱きしめちゃえばいいのに」
「えっ、いいんですか?」
「・・・今日だけなら」
「へー、案外ヤキモチ焼かないんですね」
「今日だけ、やもん」
「えー、今日だけでも私は嫌だなぁ」
「とにかくええの。今やったら見逃す」
「・・・何でですか?」
「キムも知ってるやろ?」
「知ってますけど・・・ゆみこさんが知ってるのは意外でした」
「・・・同じ人を好きなんやもん。
自然と分かってしまうというか」
「ゆみこさん・・・」
「となみが後悔しないためなら、別にええかなって・・・」
「いい人すぎますから、それ。
となみは大丈夫ですよ。
ああ見えて、結構たくましいです!」
「・・・となみには幸せになってほしいんやもん」
「チカさんとゆみこさんが笑顔でいてくれることが、
きっと一番嬉しいと思いますよ」
fin.→あとがき