*Le soleil*
□My Sweet Birthday
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あと数分で、私の誕生日。
稽古中だと、12時になる瞬間にお祝いしてもらったり
公演中には、仲良いメンバー何人かで、やっぱり12時になる瞬間を一緒に過ごしてもらったり。
今年の誕生日は、公演中じゃなかった。
でも、私にとっての大イベントの1つでもある
AQUA5のコンサートの日に迎えられるなんて、こんな幸せはないと思う。
大好きな仲間と、たくさんのお客様やファンの方と過ごせるんだ。
あー…早く明日にならんかなぁ。
もう、待つのが嫌になるくらい、わくわくが止まらない。
あ、後ちょっとだ。
3…2…1…
〜〜〜♪
「はい」
「ゆみこさーん!お誕生日おめでとうございます!」
「テ…テルっ!?」
「はい!」
「えー、すごい。12時ピッタシや」
「時計見ながら待ち構えてましたから」
「ありがとう〜!…でも、はよ寝らんと」
「…言われると思いました」
「だって、心配やもん」
「ごめんなさい…一緒に、お祝いしたかったです」
「謝らんで」
「……」
「テルが悪いんじゃないよ。ね?」
「…はい」
「うん。今日と明日は、テルと一緒に舞台に立ってるって思ってるから。
私だけやなくて、みんな、そう思ってるから」
「…はい!」
起きてしまったことは変えられない。
悔やんでも、悲しんでも、その日には戻れない。
そんなこと、誰もが分かっていて。
だから、そんなことは考えない。
今は、自分の体を大切に、ゆっくり休んでほしい。
そうテルを思いながら、電話を切った。
〜〜〜♪
「ゆみこ、誕生日おめでとう」
「わー、ありがとうございます!
オサさん、久しぶりですね〜。
…というか、こんなことするなんて…どうしたんですか?」
「ちょっと、それ失礼だから」
「やって…誕生日になって間もない時間に電話くれるなんて」
「ちゃんと覚えてただけでも偉いでしょ」
「あ、ほんまや!誕生日とか覚えるの苦手ですもんね〜」
「…もういい」
「あー、冗談です!ごめんなさい」
笑ってごまかさない、と一喝され
でも、オサさんも何だか楽しそうな声だった。
嬉しいなぁ。ちゃんと覚えててくれたんや。
そんな電話の合間にも、携帯は忙しなく鳴り続ける。
「うわー…みんな、いっぱいメールくれてる」
花組や雪組の下級生から上級生まで…
嬉しくて、ちょっと泣きそうになる。
一人ひとり、大切に読んでは保存して
愛が込められたメールが一通ずつ増えていく幸せを噛み締めた。
遠く離れていたって、みんな大切な、かけがえのない存在だ。
でも…まだ、あの人からは何もない。
って、欲張りはやめよう。
きっと、今日のリハで疲れているだろうし…。
あー、でも声だけでも聞きたかった。
〜〜〜♪
もしかしてっ。
「はい!」
「…ビックリしたー」
「なんやー…まゆさんか」
「なんやって何ですか」
「あ、ごめんごめん」
「その、言葉を2回繰り返す癖、やめてくださいよ」
「癖やなくて、たまたまやん」
「や、前のゆみこさんは言わんかった。
あの人と付き合う前は、ね」
「…付き合って、どれだけ経ってると思ってるん?」
「興味ないです」
「うわー、ひどい」
「私が興味あるのは、ゆみこさんだけやもん」
「はいはい」
「愛の告白を、毎度さらっと流すのやめてもらえません」
「結局、電話の用件は?」
「あ、そやった。ゆみこさん、誕生日おめでとうございます」
「わーい♪ありがとー」
「って、本当に綺麗に聞き流しましたね…」
期待していたあの人からじゃなかったけど、
久々のまゆさんとの電話が楽しくて(特にからかうのが)
ちょっと長電話をしてしまった。
もうすぐ、1時か…。
おめでとうメールのラッシュも少し落ち着いて、
携帯もやっと休めると言わんばかりの静けさだ。
もう…寝ちゃってるよね。
→続きます〜。