*Le soleil*

□魔法の言葉
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よく気が付くんだか、鈍いんだか。



「あー・・・また。ゆみこは無防備すぎる」



確かに、無防備な所はあるけど。

誰が見てるかも構わず、暑いのか彼女はTシャツの裾を軽くめくって扇いでいる。
そのせいでチラチラと少しだけお腹が見えて。
そのせいで、うちの組の顔がいつも怒ってるけど。




「あー・・・また。ゆみこは無邪気すぎる」



夢中で下級生達と楽しそうに喋る彼女を見て、ヤキモチ?
確かにあの子は、下級生だからといって偉そうにしたりしない。
むしろ幼い、というか。同じ目線で親しく接してくれるから。
だから、慕われているし良いことだとも思うけど。
あのニコニコ顔を誰かれ関係なく向けるのが、チカは気に入らないんだよね。



「ホント・・・誰と付き合ってるんだか」



チカが不安になる必要なんて、全然ないのに。


気付いてない、みたいだよ、ゆみこ。


チカだけにしか見せてない笑顔とか、

チカだけにしか見せてない仕草とか、

そんなのも全然、気付いてないみたい。


見てる私が照れるくらいの、笑顔なのにね。



「チカさん」

「何」

「・・・なんでそんな機嫌悪いんですか」

「ゆみこのせい」



あーあ。しゅんとして、可哀想になるくらい落ち込んでる。

チカも妬いてるなんて言いたくないだろうから、ツンとしたまま行っちゃったし。



「大好きですって抱きついといで」

「え?」

「単にヤキモチ妬いてるだけだから」

「ヤキモチ・・・ですか?」

「そ。クールなミズナツキさんも、好きな人のことは不器用だから」

「・・・・・」

「試してみるといいよ」

「けど」

「大丈夫。大好きは魔法の言葉だから」



ゆみことチカは何気に似た者同士かも?

お互いに、すごく好きなくせに。

なんというか、空回り。

まぁ、チカはあまり何も言ってくれないだろうしね。




「大好き、、です」



2人っきりのリフレッシュルームを覗くと、
ゆみこに抱きつかれたまま顔を真っ赤にしてるチカの姿があった。

その顔を見て、ゆみこも顔を赤くして。

初々しいったらない。



「ハマコさんの言った通りでした!」


嬉しそうに笑って報告してくるゆみこは、さすがに可愛い。

律儀というか何というか。



「大好きって言ったら・・・私もって言ってくれて」



話しながら顔を赤くして。

付き合いたてならでは、なのかな。



「ほんまに、大好きは魔法の言葉なんですね」



チカのことを想いながら話してるせい?

この笑顔を長く見せられるのは、ちょっと。

何とも思ってない人が見たって、威力がありすぎる。



「だから・・・無防備で無邪気すぎるんだって」

「・・・ま、頑張りな」



そうやって、チカが毎日機嫌悪くなるのは仕方がないことなのかも。





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