*Le soleil*

□いつかふたりで。
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今日は遅くなるからいいって言ったのに。



『会える日は会うって、決めたもん』



なんて、肩をもんでくれながら子どもみたいにニコニコして。


これ見せたら、どんな顔するかな。

正直、私は照れたんだけど。





「ただいまー」

「おかえりなさい」




ただいま、と言ったら、すぐに声が聞こえて

リビングのドアから、ひょこっと飛び出してきた。

持っている荷物を私の手から奪って、ドアを開けてくれる。

部屋はすでに適温になっていて、朝広げられていた雑誌たちは今はどこに。




「ゆ、」

「雑誌は全部、ラックの中に入れておきました」




頭の中を読んだかのように言葉を遮られて。

ラックの中を覗くと、発売日順に並べられていた。




「あ、」



上着を脱ごうとしただけで、ぴゅんと素早く動いて脱がしてくれる。


ついでに、さっと髪も整えられて。
いやいや、もうお風呂入るから。
そう思うのに、私もされるがままだ。
劇の関係上、何でもしてもらうことに慣れてきたような・・・





「お茶会、どうでした?」



くいっと引っ張って、私をソファに座らせた後
その隣に、ゆみこも腰を下ろしてワクワクと見つめてくる。


仕事を終えて、やっと2人きりになれる時間。
そこで他愛もない、今日の出来事を話すこの時が2人とも大好きで。




「知りたい?」

「えー、なになに」




大好きなんだけど、さすがに今日はちょっと言いにくい。




「ゆみこさ、ファンの人から何もらったんだっけ」

「あ、旅行券ですけど」




チ、チカさんとの。


ぼそっと付けたした声がこもっている。

恥ずかしいからなのか、クッションを抱きかかえて顔を埋めているせいか。


無言で、バッグから目録を取り出して渡すと。




「これ・・・」

「旅行券」




ぽかーんとした顔で、目録を何度も読み返している。



お、徐々に顔が赤くなってきたかも。




「愛の逃亡者にちなんで、一緒に行こうか」

「それなら、みなこも」

「あ、ハマコも行きたいって言ってた」

「・・・でも、、」

「うん」




お互いの目録に、名前が指定されてしまっていては。




「他の組のトップと2番手も、こういうのもらったりするんかな」

「ないと思うけど」

「即答・・・」

「だって、私が2番手の時はなかったよ。タカコさんとも、コムさんとも」



イグアスでも、たくさんお世話されてくださいね。

なんてコメントまでもらってしまったんですが。




「何、複雑な顔してるの」

「だって、なんか」

「大丈夫、関係はバレてないって」

「でも」

「じゃあ、やめとく?」

「・・・何を?」

「一緒に旅行」




ファンの人達は、むしろ私達が仲良いのを喜んでるだけだと思う。

それを面白おかしく、プレゼントしてくれて。

でもゆみこは、こういうのも警戒してしまう所があったりする。

嬉しいけど、大丈夫かな?って。




「別にいいよ?私はハマコと行くし。
 ゆみこは茶会で大活躍だった佐野さんと行くのもアリじゃない?」




佐野さんオチの話を聞いて、うっすら妬いたりしたのは内緒。

8割は私の話だったらしいから、それだけでも喜んどかないと。



「あかんでしょ・・・目録に書いてあるもん」

「でも、別にバレないと思うけど」

「・・・・・チカさんと行きたい」




目録を見つめるその顔に触れると、その熱さにビックリした。




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